2017 Fiscal Year Research-status Report
移住者増加による観光業の発展とコミュニティの再編-韓国済州島舊左邑を事例にして
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17K02133
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
鄭 玉姫 立教大学, 観光学部, 助教 (80742163)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 移住者 / 観光業 / 空間構造 / 地域コミュニティ / フィールドワーク / 済州島 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、韓国の伝統的な農村地域がどのように水辺空間を活かした観光地へと変容を遂げたのかを明らかにするものである。その際、韓国の都市移住の増加に注目し、移住者による地域の変化を明らかにする。とくに、観光業の展開と土地利用の変化についてはフィールドワークを、移住者の存在からみる地域コミュニティの構造については地元民・移住者ともにインタビュー調査を実施して解明に努める。研究対象地域に韓国済州島月汀集落を選んだ。2017年度の研究成果は次の通りである。 (1)済州島における移住者が経営するゲストハウス、カフェ、レストラン等の開業状況を把握するため、済州市役所から民泊と飲食店のデータを入手し、それらの開業時期、地域的分布の分析を進めた。 (2)月汀集落での移住者経営のカフェ、ゲストハウス等といった観光施設の空間分布の特徴を解明するため、フィールドワークを実施した。そしてフィールドワークの調査結果から代表的な観光施設をいくつか選んで、土地台帳と建物台帳の資料を収集して土地と建物の所有者、増改築の変更有無を分析した。その結果、海沿いにはカフェストリートと呼ばれるほど、カフェが多く、そこから裏側にはレストランとゲストハウスが建ち、さらに内陸へ進むと大規模の観光施設が見られた。このような空間的特徴は沿岸からの距離によって制約されていることが推測される。 (3)ゲストハウス、カフェ等の経営動向を把握するために経営者向けにアンケート調査を実施した。また、移住者(5名)を対象に月汀集落の生活環境、集落内活動等についてのインタビュー調査も行った。 (4)上述の研究成果から、韓国政府、民間企業による農村地域における観光開発ではなく、移住者という外部的要因がどのように農村地域の景観、土地所有の形態、観光施設の運営等に影響を与えたのかが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者の研究は研究計画通りに順調に進んでいる。研究協力者とも綿密に連絡を取りつつ、研究成果を共有している。 ただし、上記の(3)においては経営形態と空間分布との適合性を念頭に入れながら観光施設の経営パターン化を図ろうとし、いまだ整理中である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)都市民の農村地域への移住傾向に関する分析を進めるとし、いわば田園回帰の視点を重視して分析を深めていく。併せて、韓国人が意識する観光トレンドの分析も進める。 (2)済州島における地元民と移住者との関係構造について分析を進める。2018年2月の現地調査において、月汀集落における老人会や青年会の役員、会員を対象とするインタビュー調査を実施している。これらの結果を踏まえつつ、地元民・移住者間の関係構造について分析を進める。 (3)上記の(1)と(2)の調査結果と、観光地理学、文化論等の文献調査に基づく理論的枠組みの検討を合わせて、移住者の増加にともなう地域コミュニティの変化について解明する。これらの研究結果は、国内外の学会にて研究成果の発表、学会誌への投稿で公開する。
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Causes of Carryover |
次年度使用の繰越金が生じた理由は、現地収集資料が無料で入手できたことや図書等の物品購入が計画通りに実行できなかったことによる。繰越金については、平成30年度の研究費と合わせておもに国内外の現地調査のための旅費の用途に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)