2017 Fiscal Year Research-status Report
地域資源を活かした新たな地域振興と芸術表現のかたち
Project/Area Number |
17K02136
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
酒百 宏一 東京工科大学, デザイン学部, 教授 (90293026)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アートによる地域振興 / ワークショップによる協働制作 / 地域産業資源の活用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は2014年度に採択された「アートをまちにひらくことによる新たな地域振興と芸術表現のかたち」での成果を基盤にして2017年度採択により、さらに地域資源を活かした地域振興と新たな芸術表現を展開していくものである。 その初年度(2017)の活動は、改めて本活動のきっかけとなった大田区の地域資源である町工場とその町工場の職人が扱った道具そのものにしっかりと目を向け、地域による営みとモノづくりの魅力を探る二つのイベントを開催した。 一つは、2013年より本活動の拠点として工場見学、道具の提供に協力していただいた町工場跡(大田区北糀谷,綱島製作所)が取り壊されることから、1日限りの一般公開(6月18日実施)を行い、周辺住民、都内各所から多くの来場者とともに貴重な資源を惜しむと同時に資源の価値を再確認した。公開にあたって研究代表者が会場で、解説を行い、開催時間中に来場者との交流を行った。また数百メートル離れた西糀谷のギャラリーにて、この町工場の道具に直接触れ、色鉛筆と紙で写し取るワークショップをデザイン学部学生の指導により実施し、資源の理解と普及に努めた。 もう一つのイベントは、この工場の道具を紹介する展示会を開催。物資を運ぶ際に使用されるパレットを展示台にして、町工場跡のギャラリー内に道具が果たす加工・役割別に分類し、その道具によりつくられた完成品を同時に展示した。また会場では大田区の工匠として認定されている職人にインタビューした映像を流し、道具と職人のモノづくりに迫った。また会期中には、この地域周辺の工場まちを巡るまち歩きと展示された道具を使用したワークショップを開催し、展示企画内容の理解を促した。 4年目の継続的な研究活動ではあるが、昨年度の区切りを経て、新たな研究活動として、地域資源の理解と地域振興に対するきっかけづくり、さらには芸術表現のさらなる展開への布石を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的は、すでに観光資源として認知されたものではない地域における人々の営みを資源としていかに魅力として捉え、それを地域住民が地域の誇りとして認め、協力するかにある。そういう意味では、すでに3年間の取り組みのなかで、資源活用のワークショップを通した手法によって一定の成果を得ている。 したがって本研究の目的は、さらにその取り組みで得た成果を展開させ、さらに地域振興のひとつの手法として確立し、運営させていくことにある。研究の初年度(2017)は、ワークショップよりも地域資源それ自体をより多くの人に知ってもらう活動として旧町工場の公開と道具の展示会を企画し、実施できた。これにより、価値観を共有し、理解者を増やす取り組みとしての成果はあった。 しかし、資源の魅力を伝える町工場が取り壊され、失われたことで今後直接的に見学できる町工場を見つけなければいけないこととなったことは、非常に大きな資源を失ったことが今後の研究活動においても惜しまれる。 また、他地域の町工場の現状を調査することができなかったことが悔やまれる。当初計画にあった東大阪市と三条市への視察は、次年度に実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の2年目は、継続的な活動として一般参加者を募集したワークショップを実施していくことを基盤として、今年度(2017)実施できなかった他地域での町工場の現状と地域振興策について調査を行う。 また、大田区の町工場資源の掘り起こしを行い、現在稼働している町工場の現場から、営みの聞き取りや記録等を通して、さらに資源をアーカイブ(保存)する活動を行っていく。 対象となる町工場については、展示会での交流を通して紹介していただいた昭和初期の町工場を考えており、実際にすでに見学も終えており、工場の仕事と並行して本研究の活動について協力いただけるように今後働きかけていく。 また当初の研究計画では、これまで蓄積してきた町工場に関しての調査記録、交流活動をひとつの地域資源を伝える印刷物の発行とあるが、その新たな地域資源の掘り起こしと調査、記録を含めることが望ましいことから、編集企画を再検討し、印刷物の発行を想定して調査等取材を実施する。そして発行は次年度となると思われるが、なるべく早期に発行し、当初の最終年度での計画に効果的なメディアとなるように推進する。
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Causes of Carryover |
「町工場の道具展」開催実施にあたり、白塗装の木製パネルを10枚使用した。見積りを依頼したところ、これまで何度かおつきあいのある業者(ワーカーズ)が安く、目的等も理解していただいたことで決定、すでにその時点で、納品期日に間に合うかどうかということだったので、こちらから直接依頼を行った。また、今回の見積もりに関して所属の研究機関の科研費規定の確認不足や見積もり額の誤認もあって、発表が終了した段階での予算確認になってしまった。結果、パレットレンタル料やギャラリー使用料についての残額を大幅に超えていたため、他予算から支出することとした結果、小額の残額が生じた。 当初の計画よりも物品費、その他必要経費が大幅に増額され、調査旅行が実施できなかったことなど使用額の計画を今後注意し、次年度以降そうしたことが起きないように考慮する。
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Research Products
(2 results)