2018 Fiscal Year Research-status Report
地域資源を活かした新たな地域振興と芸術表現のかたち
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17K02136
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
酒百 宏一 東京工科大学, デザイン学部, 教授 (90293026)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アートによる地域振興 / ワークショップにおける協働制作 / 地域産業資源の活用 / コミュニティデザイン / コミュニティの記憶継承 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究における2年目(2018)の活動は、これまでの活動を基盤として地域資源である町工場を活用した地域振興の展開を図った。5月と7月にこれまで大田区のなかでもあまり取り上げられることの少ない大田区東糀谷のエリアを中心として、準工業地帯や羽田道などの埋もれている魅力を一般の参加者と共に見て歩き、町工場跡をギャラリーにした会場で道具の写し取りのワークショップを行った。さらに11月にも東糀谷、西糀谷と2つのまち歩きコースを巡りながら、道具の写し取りに参加してもらうワークショップを2日間行った。このイベントには、上述したギャラリーにこれまでの作品を一部展示公開しながら開催した。 このエリアの特徴は、海苔業が盛んであったこと、また江戸前の物資を運ぶための羽田道や明治の行楽地森ケ崎海岸、さらに最近では映画「シン・ゴジラ」での上陸した最初の場所ということもあり、観光資源の掘り起こしとしても町工場と組み合わせて土地の成り立ちを理解してもらうことを意図として計画した。 また11月に行ったイベントでは、最終年度での研究発表の展示方法の検証を行った。これまでと違い支持体を持たない方法として今回は、天井の梁にワイヤーで渡して強く張ったところに、作品同士を専用のクリップでつなぎ合わせた。そうすることで壁面に頼らずに空中に作品を展示することができ、なおかつ常時作品を増やしたり、減らしたり更新することができるのである。 また10月には「アートと考古学国際交流研究会」にコミュニティと記憶をつなぐ実践事例としてプレゼンテーションを行い、町工場の道具も合わせて展示出品し、旧石器時代の道具と考古学研究でのつながりをもつことができた。 このように、今年度の研究実績は比較的控えめな活動であったが、新たな地域資源の掘り起こしと異分野での研究領域との交流、また次年度での発表につながる試みを検証する機会となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新たな地域資源の掘り起こしと次年度での発表につながる試みが本年度における研究実績であったが、本研究課題での当該年度の研究計画では、これまでの活動を補足するために町工場という土地に根ざした地域産業を資料として印刷物にまとめ、多くの人の理解を促していくことが当初の計画であった。またそれをもとに外部関係者を交えた発表会や講座、セミナー等を企画実施し、さらなる展開のきっかけづくりを行うこととしていた。 しかし、大学業務に加え、外部委託における研究活動実施が重なり、多忙を極めたことなどにより、本研究の軌道修正を余儀なくされた。なぜなら印刷物としてまとめることは、これまでの活動資料に加え、新たな取材や編集作業といった計画と地道な積み重ねが必要なため、その時間を費やすことができないと判断したからである。 このことにより本課題における研究は、これまで進めてきた活動を基盤として展開はできているものの研究目的である町工場での人の営みを文化資源としての理解や交流としての関わりを深めることについてはやや遅れていると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度となる2019年度の研究は、計画の通りこれまでの活動の成果を発表する展示を行う。大田区の「町工場」を芸術表現によって再評価することや再定義することに加え、「美術」を「まちに開く」ことによって社会問題に対する美術の役割についても再考、再評価を与えるものとして企画する。そのためには、2018年度に取り組むことができなかった「町工場」についての独自の視点による取材と研究成果をまとめることを並行して進めていくことが目標である。 しかし課題となるのは2018年度と同様に研究に対するエフォートが保てなくなることである。そのための方策としては学部学生及び大学院生をアルバイトとして雇うことを計画することや町工場への取材を身近にするために移動手段を検討している。それでも実施することが難しい状況であれば、印刷物としてまとめずに展示できる写真や映像として記録することを第一に進めることとする。 また展示については、前半の7月中旬までに参加者募集型のワークショップを企画し、作品づくりに協力を呼びかけ美術作品として発表できる準備を進める。展示場所についても前半の8月までに決定し、イベントの企画等含めて確定させ、その広報も含めて準備をしていく。
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Causes of Carryover |
平成30年度計画していた調査旅行(50,000円)は、予定を合わせることができずに取りやめたことと、ワークショップ開催にあたり当初10日分の会場使用が半分の5日分(100,000円)となったこと、さらに業務負担や外部委託による活動により印刷物の出版(650,000円)ができなかったためである。 次年度の使用計画については、旅費は使用せずに当初から予定している研究成果発表のための会場費並びに発表のための準備等で学生アルバイト代、さらには通常の美術館のような施設ではなく、町工場跡の場所を利用するため展示物の材料や制作費、また出版を行うための制作費や印刷費に使用する計画である。
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Research Products
(2 results)