2019 Fiscal Year Research-status Report
地域資源を活かした新たな地域振興と芸術表現のかたち
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17K02136
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
酒百 宏一 東京工科大学, デザイン学部, 教授 (90293026)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | まちの記録と継承 / まちの記憶と継承 / 地域資源の活用 / アートプロジェクトの役割 / アートと共創する社会 / コミュニティとデザイン / ソーシャルデザインとしてのアート / 地域における持続可能な活動のデザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の3年目にあたる2019年度は、これまで継続してきた住民参加の町工場を資源とした地域振興活動とその成果発表を主な研究実績の概要とする。 その具体的な内容について、まず参加者を募集して実施した地域振興活動では、大田区六郷地区で実際に稼働している4つの町工場を見学し、さらに町工場の道具をフロッタージュという描画手法によって写しとるワークショップを開催。4日間で延べ40人の参加があった。これまでの活動と違い、活動に協力していただける新たな町工場から参加を得ることができ、また同時にそうした活動に興味を持っていただける新たな参加者もあり、これまでの活動の継続から得られた新たな活動の展開のきっかけを得ることができたことが今年度のこの地域振興活動としての意義であり成果である。 さらに本研究課題の成果発表について、大田区大森西にある戦前から存続している町工場の一角を借りて、これまでの活動で取り組んできた内容を紹介した。本研究の目的である地域資源としての町工場を自ら借りて、その場所で活動の成果を展示する意義は大きく、研究発表を空間として体験してもらうことや交流を通して理解や興味を持ってもらうということが、この発表展示会のテーマである『明日へのまちへの記録と継承』につながる取り組みであった。しかし、展示発表の期間(2020年3月6日から2020年3月8日)は、新型コロナウィルス感染に対する影響で予定していた関係者によるクロストーク、研究発表(口頭発表)、ワークショップといったイベントを全て中止したため残念ながら参加者は少数となってしまった。 成果発表についてはやむを得ない不測の事態により活動の自粛を余儀なくされたが、発表したという実績と展示の記録は今後の研究活動の展開として、また次につながるものであると認識している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題における当初の実施計画からすると進捗状況についてやや遅れていると判断する。その理由として、本研究の目的は、地域振興活動の新しいかたちを探り、交流活動をさらに発展させ、深めていくことであるので、当初計画にあった町工場の現場を調査して、その印刷物を編集し、発行することが依然できておらず、またそれに伴い活動も鈍くなってしまったと言わざるを得ないからである。また、計画していた発表の機会も新型コロナウィルス感染症の影響により、自粛したことも理由の一つである。 現在までの研究の進捗状況について、本研究は2014年からの科研費採択課題による研究の経緯をふまえて、これまでの活動の基盤を活かして開催している「オオタノカケラ」(地域振興活動)はここまで継続して行っている。そこでは研究の新たな展開を検証しながら進めていくことが求められたが、やや形式化しすぎてしまい新しい参加者や活動を拡げるには至らなかったことを実感しているが、2019年度は新しい町工場への繋がりを持つことができ、それによっての展開が見えてきたことは成果である。 また地域資源の記録についても、成果が上がらなかった。町工場を閉鎖しているところは数多く見受けられたが、事業者と接触できずそのまま町工場は取り壊されて、事業者からも聞き取りができなかったというケースが頻繁にあった。本研究にとって町工場は貴重な地域資源であるため、人知れず資源が消えてなくなっていくことを避け、研究活動につなぐための仕組みづくりをしなくてはいけなかったはずである。それに至っていないこともこの進捗の評価につながっている要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、以上の進捗状況をふまえ、事業期間の延長によって、できなかったこれまでの研究成果を記録し、さらに研究のテーマについての提言等を含めた印刷物を発行する。また町工場資源の記録活動について、その仕組みづくりに取り組む予定である。 しかし新型コロナウィルス感染症の影響により、町工場関係者との聞き取りや実際の工場に行っての取材はできないため、これまでの実績による記録等を活かした編集と制作を行う。また、町工場資源の記録については、今後制作する印刷物にも町工場資源活用の活動について記載する他、配布先において不動産業者や大田区観光課、産業振興課、地域力推進課、都市計画課等の関係者とのコンタクトによって周知し、情報収集や情報共有を依頼する。 まずは事業期間の延長により研究活動の機会を大切にして、次年度の計画を実行し、さらなる研究活動への基盤や展開への足掛かりを築いていく。
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Causes of Carryover |
当該年度の当初計画していた支出費用額については大きな差額は生じなかったが、支出費目の違いが見られた。謝金で計上していた1,000,000円の使用額が188,900円だったことについては、展示発表場所を利用することやそれに伴っての費用を見こしていたが、それらの費目が「その他」であることや物品費については足場の設置を業者に依頼したことで、それも「その他」の費目になったためである。 そのため次年度使用額が生じた理由は、一昨年度(平成30年度)使用額がそのまま残額として残ってしまったものであると言える。 であるから残額(619,353円)の次年度使用計画は、研究期間を延長して計画通り、出版物の制作と印刷費として使用する。
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Research Products
(2 results)