2017 Fiscal Year Research-status Report
資源管理と地域再生に向けた観光ガバナンスの構築プロセスの研究
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17K02143
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
森重 昌之 阪南大学, 国際観光学部, 准教授 (20611966)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
敷田 麻実 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (40308581)
海津 ゆりえ 文教大学, 国際学部, 教授 (20453441)
内田 純一 小樽商科大学, 商学研究科, 教授 (40344527)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 観光 / 観光ガバナンス / 観光まちづくり / ガバナンス / 社会的包摂 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、①地域資源の生活利用と観光利用を調整するメカニズムの分析、②地域内外の関係者が観光にかかわる機会やそのプロセスの解明、③観光ガバナンスの推進による地域社会の再生プロセスの分析、④①から③を要点とする観光ガバナンス論の確立を目的としている。1年目となる本年度は4回の研究会を開催し、うち1回は和泉大樹・阪南大学国際観光学部准教授を講師に招き、共同研究会を実施した。 本年度はまず、2014~2016年度の科研費「資源マネジメントのための地域ガバナンスと観光ガバナンスの融合可能性の研究」の成果をベースに、国内外の「観光ガバナンス」に関する先行研究をレビューした。その結果、観光ガバナンスは国家や地域社会、国際レベルといった地理的スケールから見た研究に分類できるほか、コーポレート・ガバナンスやバリューチェーンに関連した企業レベルの研究、既存のガバナンスモデルを援用し、類型化や発展段階の分類を試みた研究、さらに災害や危機管理といった通常とは異なる利害関係者間の関係性や対立の顕在化に対応した研究が見られることが明らかになった。その上で、先行研究に共通した特徴から、観光まちづくりを考察するために応用できる視点として、①観光地における問題解決が当事者間の調整から統合的な調整に移行し、問題解決が複雑化していることから、観光ガバナンスの視点がそれらの解決を支援する可能性を持っていること、②観光と地域づくりの一体化に伴い、従来の目的志向の観光マネジメントが限界を来たしている中で、「統治や調整の枠組み」の構造的な変化を扱う概念として観光ガバナンス概念が重要になっていること、③ガバナンス志向による多様な関係者の参加や社会的包摂の視点に対応し、観光客の権利の統合的な調整を担うガバナンスの役割が増していることを指摘した。 これらの成果を取りまとめ、現在日本観光研究学会誌への投稿準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初、3回の研究会を予定していたが、観光ガバナンスにかかる先行研究の整理に時間を要したこともあり、4回の研究会を開催した。結果として、国内外の「観光ガバナンス」および「tourism governance」に関する先行研究はほぼ網羅的に整理し、その動向を把握できた。また、学術的貢献の範囲や観光まちづくり研究の課題克服に向けて参照すべき知見も得ることができた。 一方で、本研究メンバーはいずれも、国内外で精力的にフィールドワークを行っているが、本年度は観光ガバナンスにかかる先行研究の整理に時間をかけたため、各研究メンバーのフィールドワークの成果をこれらの観光ガバナンス研究に十分反映できたとはいえない。ただし、フィールドワークの成果を反映させるための理論的土台や課題克服のための共通の基盤はある程度築くことができている。加えて、和泉大樹・阪南大学国際観光学部准教授を講師に招聘した共同研究会において、大阪府泉南市や山梨県南アルプス市、大阪府千早赤阪村の研究事例の紹介があり、文化財の観光資源としての利用とそれに伴う関係者の拡大への対応に関する知見も得ることができた。 以上のことから、本年度の研究はおおむね順調に進展したと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度については、本研究メンバーが実施している北海道標津町(担当:森重)、北海道知床地域(担当:敷田)、北海道ニセコ地域(担当:内田)、三重県鳥羽市(担当:海津)におけるフィールドワークを引き続き進めていく。その上で、当初の研究計画に沿って、フィールドワークで得られた知見を共有・精査し、観光ガバナンスの理論化をめざす場として3回の研究会を開催する。また、本年度と同様、必要に応じて関連分野の研究者を招聘した共同研究会も開催し、観光ガバナンス論の理論的整理に向けて議論の精度をより高めていく。 さらに、本研究での中間成果を2018年7月に開催される観光学術学会第7回大会、同年12月に開催予定の第33回日本観光研究学会全国大会などの観光関連学会で発表し、専門家の幅広いレビューを受けることで、多様な視点から分析を行っていく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、出張先で入手予定の書籍を購入できなかったことがあげられるが、今年度に入手することにしている。次年度使用額は本年度交付額の0.2%(直接経費に占める割合)と些少であり、次年度の研究遂行上、ほとんど問題はないと考えている。
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