2021 Fiscal Year Research-status Report
現象学的方法による観光の倫理的問題の明確化―観光倫理学の構築にむけて
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17K02145
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
紀平 知樹 兵庫県立大学, 看護学部, 教授 (70346154)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 観光倫理学 / 倫理憲章 / ポスト現象学 |
Outline of Annual Research Achievements |
COVID-19感染症蔓延のため、フィールドワークなどを行うことが困難であり、主として文献読解を通して観光倫理学の構築に向けての研究を行った。最初に行ったのは、欧米ですでに研究が進んでいる観光倫理学がどのような問題意識を持って成立してきたのかということの確認作業である。そのため1990年代後半から2010年頃までの観光倫理学の草創期の主要論文を検討した。その結果、先行する応用倫理学の諸分野との関係に関する議論では、環境倫理学との親和性をあげるものが多く見られた。また、観光倫理学を構築する動機としては、観光産業の発展とともに、その弊害が多く見られるようになってきたことに関して、一定程度の規制が必要であるという議論が見られ、観光産業、観光者の行動を規制するためのルール作りとしての観光倫理学の需要が高まったことが明らかになった。 観光倫理学が先行する応用倫理学を範として、行為を規制するための倫理を打ち立てようとしているのに対して、アーリやマキアーネルなど観光学研究を開拓してきた研究者たちの方向は近代を問い直すための格好のモデルとして観光を取り上げており、観光倫理学の研究方向と観光学の研究方向にずれがあることも明らかにした。 さらに、現象学の立場からの観光倫理学の可能性として、ポスト現象学の主張の有効性について検討を行った。とくに技術の媒介理論によって技術に同行する倫理を提唱するオランダの哲学者フェルヴェークの議論の観光倫理学への転用可能性について検討する必要があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、現象学の立場から観光倫理学の問題を明確にすることを目的としている。これまでの研究で、質的研究の方法としての現象学のあり方についての考察を行い、現象学的方法を用いた研究として明確にすべき点が何であるかを明らかにしてきた。また、フッサールの「意志の現象学」の考察を用いて、観光の現象学的考察が可能であることも示した。そうした研究に加えて、ポスト現象学の立場から、観光に関して、技術の媒介理論を用いて考察することが可能であることを確認した。そのことによって、観光の現象学的考察の範囲は大きく拡張されることになる。すなわち、観光者の観光経験の記述のみならず、観光において用いられるさまざまな技術、あるいはモノがもっている志向性を探究する可能性である。 こうした考察を踏まえて、観光の倫理的問題を現象学的に明確に示す基盤を整えたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方針としては、ハイデガーやメルロ=ポンティ、レヴィナスなど、フッサール以外の現象学者たちの議論を用いて観光を記述する場合にどのような問題が見えてくるのかを検討することである。もうひとつは、ポスト現象学の観点から観光に用いられる技術、例えば交通機関、スマートフォン、カメラなどがもっている倫理的含意を明らかにすることである。 研究は主として文献研究によっておこなわれるが、COVID-19の感染状況を考慮しつつ、可能であれば、さまざまな観光地で用いられている技術の調査を行い、その倫理的含意についての考察をすすめたいと思う。
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Causes of Carryover |
2021年度もCOVID-19感染症の流行のため、観光地での調査や学会出張などができなかった。そのために研究期間の延長申請を行った。2022年度は昨年度よりも、行動制限が緩和されそうな見通しであり、これまでできなかったフィールドワークなどを行う予定である。
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Research Products
(1 results)