2017 Fiscal Year Research-status Report
伊勢参宮ツーリズムの近代史に関する実証的研究 ―御師廃止から昭和戦前期まで―
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17K02146
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
平山 昇 九州産業大学, 商学部, 准教授 (20708135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 裕信 皇學館大学, 文学部, 准教授 (10440835)
濱千代 早由美 帝塚山大学, 経済学部, 非常勤講師 (60599520)
森 悟朗 國學院大學北海道短期大学部, 国文学科, 准教授 (10445463)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 観光 / 旅 / 旅行 / 信仰 / 伊勢神宮 / 御師 / 神道 / 地域社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、以下の内容を主軸として研究活動を展開した。 平山は、1872 年の御師制度廃止という大変革後の参宮ツーリズムの実相を明らかにするために、鉄道資本による手軽な参宮日帰り旅行、あるいは大正期から拡大していく小学校児童を中心とする伊勢参宮修学旅行といった近代的な参宮旅行が、旧御師の役割を代替・再編成していく過程に着目して、鉄道・教育・神道関係の史料を収集・検討した。 谷口・濱千代は、本研究の基礎作業となる岩井田家資料の目録作成作業を進めた。これを基盤として、岩井田家などの旧御師家と旧檀家との関係が、御師廃止後にどのように推移していったのかを、旧檀家側に残されていた文書(岩井田家の檀那場でもある埼玉県内の文書)もあわせて、検討した。一つは旧檀家が旧御師との関係を継続させたのか、それとも断絶したのかに関して、旧檀家が参宮した際の宿泊を事例とする考察である。もう一つは旧御師が旧檀家との関係継続のために、如何なる働きかけを行ったのかに関する考察である。さらに余力があれば、神社神道側から見た旧檀家の存在に関する史料収集とその分析についても着手してみたいと考えている。 森は、近代の伊勢講である神風講社の旅宿ネットワークの変容・衰退の過程から、近代伊勢参宮の変容を考察した。特に鉄道敷設など、社会変化との関連に注目した。また、岩井田家資料に見られるような神風講社以外の伊勢講との比較対照も行なうため、必要な史料・文献の検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全メンバーが意欲的に課題に取り組んだため、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、各メンバーの専門分野との関連を生かしながら、以下の点に留意しながら進めていく予定である。 ①「岩井田家」資料目録作成の完成を目指した作業をすすめる。文書資料は、現在10,000 点余の目録採り作業が進められてきたが、今後さらに進展するように支援することとしている。 ②近代における「伊勢信仰」の持続と変化の問題を岩井田家資料の分析を通して明らかにすること。「伊勢信仰」という術語は必ずしも古くから用いられてきたわけではない。従前は伊勢神宮への信仰のあり方を示す場合には「大神宮崇敬」と称され、「伊勢信仰」の用語は、神宮が国家管理下から離れるようになった戦後以降と言える。この点では、「伊勢信仰」という場合、研究対象の領域や分野は広がりをもつが、前近代から近代、さらに戦前・戦後という時代的な変化のなかにおける神宮と人々の関係性を問う必要があり、そこに「伊勢信仰」の持続と変化という問題を捉える観点があると考えられる。こうした点を具体的に岩井田家資料に依りながら解明を図りたい。そのために、御師制度廃止後も岩井田家と関係を有してきた旧檀家地域の消長をマクロな観点から整理する作業を進め る予定である。また、地域社会のみならず鉄道側からの視点も取り入れて検討していきたい。 ③関東の岩井田家旧旦那地域において、旧来の伊勢講が再編される過程で新たに構築される組織と岩井田家との関係、あるいは岩井田家が世話役となり、記念碑等を建立した事例が見られ、その状況を岩井田家資料と現地資料との対比を通して明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
研究は順調に進められているが、旅費や文献購入の費用が当初予定していたよりも少額で済んだ。次年度以降は、岩井田家資料の目録作成や現地調査、ゲスト・スピーカーを招聘した研究会など本年度よりも費用が多く必要となるため、そちらに充当する予定である。
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Research Products
(10 results)