2018 Fiscal Year Research-status Report
Philosophical Inquiry into the Semantics of Picturial Images
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17K02159
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
清塚 邦彦 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (40292396)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 画像 / 表象 / 内容 / 意味 / 描写 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は画像の描写機能の理論的究明であり、ウォルハイムが提起した絵画知覚の二面性という事実に注目しつつ、その本性についてウォルトン流のメイクビリーブ理論がどのような補完を必要とするかを見極める点を課題としている。絵を見る経験が、平面を見る経験でありながら同時に多様な具象的事物を見る経験でもあるという二面性の事実は疑いないように思われるが、それがいかにして可能であるかについて、果たして「あたかも~を見ているかのような想像」を持ち出すウォルトンの着想だけで足りるのかどうか、という点が基本的な問題状況であり、この「かのような想像」への言及が有効に働くためには、その知覚的動機づけについて更に踏み込んだ洞察が必要だというのが本研究の見通しである。 この課題に向けて、平成30年度には、過去10年ほどの間に相次いで出版された「描写」関連の研究文献について展望し、批判的検討を行った(カルヴィッキ、ニューアル、ブラムソン等)。検討作業はなお続行中である。 以上の本筋に加えて、平成30年度の研究では、しばしば描写論の枠組みとして援用されるポール・グライスの言語哲学(とりわけ、その「意味」理論)について、踏み込んだ分析を行った。グライスの理論は、コミュニケーションの行為が階層をなす3通りの伝達意図を不可欠の構成要素としていることを指摘するものだが、そこで指摘されている第二、第三の意図の正確な内実と役割については多くの批判が行われてきた。本年度の研究では、とりわけ第三の意図の意味と役割について解明を行い、それが若干の修正により十分に維持可能であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初からの検討課題として想定していた認知説や類似説についての検討はおおむね想定通りに進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度の研究実施計画として当初予定していたのは、画像表象の内容(描写内容)という概念に関する理論的究明であり、特に、ロバート・ホプキンスが「分離」と呼んだ、絵の一見奇妙な見え方にまつわる問題の究明である。とはいえ、これについては平成29年度の研究の中で先取り的に取り組むこととなった。また、31年度に行う予定であった言語哲学・意味論の観点からする検討も、平成30年度中に部分的には実施した。そこで、当面の見通しとして、平成31年度は、30年度に予定していた次の2点に焦点を絞った研究を引き続き行いたいと考えている。 (1)平成29年度の当初計画に盛り込まれていた課題の継続。具体的には、描写に関するウォルトンのメイクビリーブ理論を補完すべき、メイクビリーブの知覚的基盤に関する検討。この関連では、F・シアー、D・ロペスらの認知説、ならびにC・ピーコック、R・ホプキンスらの類似説の検討が重要になると考えている。 (2)平成29年度における研究の中で浮上してきた新たな検討課題との継続的な取り組み。具体的には、画像の存在論に関する問題状況を整理・展望しつつ、それが画像による描写にどのような形で連携するかの究明。この関連では、ウォルハイム、グッドマン、ウォルターストーフらの議論以後今日に至る論争状況をまずは整理する必要があると予想している。
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Causes of Carryover |
残額が僅少であるため、研究図書購入等でのより有効な活用のため次年度使用に充てることとした。
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Research Products
(1 results)