2021 Fiscal Year Research-status Report
Leibniz's Ontology: biology, time and economy
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17K02169
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松田 毅 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (70222304)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ライプニッツ / 存在論 / 生物 / 時間 / 経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
引き続き、ライプニッツの存在論の研究を行い、その歴史的文脈の解明と関係主義的解釈を試みた。公刊された『夢と虹の存在論――身体・時間・現実を生きる』については書評や合評会(評者:飯田隆・慶応大学名誉教授、植村玄輝・岡山大学准教授、稲岡大志・大阪経済大学准教授、司会:新川拓哉・神戸大学講師)もあり、ライプニッツを軸に、近現代の存在論研究にも一石を投じることができたと考えている。““Origins” of time in Leibniz from his letters to De Volder”では、その成果を発展させるかたちで時間論について、個体のeminentな存在に関する、初期近世の自然神学の文脈を解明した。また、関連学会のシンポジウムを企画し、「エニグマとしてのモナド」と題して、アン・コンウェイの「モナド」との比較も含めて、モナド概念そのものの歴史的な起源と現代的位置づけにも迫ることができた。さらに「ライプニッツの疾病論――「水力・空気・火力の機械」の機能不全」では、その生物哲学と感染症も含む、医学と哲学の関連を解明した。初期近世の医学哲学については、まだ全体像が十分に明らかになったとまでは言えないが、ライプニッツとボイル、ファン・ヘルモントらの繋がりを解きほぐしていくための端緒が得られた。このほか、執筆依頼のあった『哲学的エッセイ集』でも、「初期近世哲学の情念論へ――怒りを例に考える――」と題して、生物哲学の観点を活かし、セネカからヒュームまでの展開のなかに、デカルト、スピノザとライプニッツの系譜を埋め込むことを試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ライプニッツ哲学、特に生物哲学、時間論、経済思想に着目し、内外の研究の歴史と現況を踏まえ、その存在論的諸問題を解釈・解明することを目的とする。生物的存在の存在論的解釈から始め、現実的時間の「進化」思想的展開となお未開拓のライプニッツの「経済思想」を焦点に、ライプニッツの「モナドロジー」の存在論の歴史的文脈を解きほぐすと同時に、 その現代的可能性を解釈することを課題とする計画であった。 この射程で見た時、今年度は代表者の従来の研究成果も活かし、存在論の単著を公刊したほか、初期近世哲学の時間論の自然神学的な位相に踏み込み、ライプニッツのモナド概念の起源にも迫った。また、ライプニッツの「水力-空気-火力の機械」に関する生物哲学研究の延長線上に疫病論を位置づけることもできた。さらに、当初の予定にはなかったが、これらの研究成果も活かし、ライプニッツの「情念論」研究への手掛かりも得ることができた。 やむを得ないことであるが、コロナウイルス感染症の影響で国内外の調査、海外渡航しての国際学会での発表、海外研究者の招聘などは中止となったので、研究交流や討議の面で物足りなさが残るが、概ね当初の研究計画は達成されたと評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、関連学会のシンポジウムで報告した「エニグマとしてのモナド」の諸主題については依頼論文として発表予定であるが、そこで得られた知見や見通しをさらに深化・展開する。特に、ライプニッツの「モナド」とコンウェイやファン・ヘルモントのそれを比較し、異同を明らかにすることで、ライプニッツのモナドの歴史的起源と現代的位置づけに迫りたい。 また、この問題に関連して、“Origins” of time in Leibniz from his letters to De Volder”で論じた、時間の「連続体合成の迷宮」の存在論・自然神学の深層をより明確にするために、用語法や概念史の観点も踏まえ、コンウェイやファン・ヘルモントだけでなく、デカルトやスピノザからスアレスやスコトスに遡る、後期スコラ哲学との関連も可能な限り、確認したい。 その上で、第二次大戦後のライプニッツ研究の総括も含め、代表者の研究プロジェクトであった「メレオロジーとオントロジー」、「生物学と生命の哲学の研究」に関する研究成果も再考しながら、「モナド」の活動的な個体性と表現的な相互関係性を存在論的に探究する。この「モナド」の存在論を起点にした、研究成果を『ライプニッツの存在論』としてまとめたい。この段階であわせて可能ならば、重要な未邦訳の文献の邦訳も開始する。これまでの研究成果をウエブサイトなどで発信することも計画している。
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Causes of Carryover |
2021年度も、やむおえない事態であったが、コロナウイルス感染症の影響で内外の調査、国際学会での発表、海外研究者の招聘などは延期、中止となり、その支出が困難であった。同様の理由で海外からの招聘者などは未定であり、海外での研究報告での支出も予定しにくい状況であるが、可能な限り、実現したい。
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Research Products
(5 results)