2020 Fiscal Year Research-status Report
Reconstruction of 'ethics of human relations -build the bridge between ethics and humanities
Project/Area Number |
17K02181
|
Research Institution | Seigakuin University |
Principal Investigator |
清水 正之 聖学院大学, 人文学部, 特任教授 (60162715)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 倫理学 / 倫理思想 / 日本倫理思想史 / 日本思想史 / 関係 / 人文知 / 超越 / 日本倫理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代日本の倫理学史のなかにある自他の関係、自己と共同性に関わる「関係の倫理学」というべき問題圏を扱った倫理学を再考し、得られた基礎的知見をもってその再構築の手掛かりとしようとするものである。その過程で、関係の倫理学の中核的な位置にある和辻哲郎の「間柄の倫理学」を対称軸として、その体系性に完結させての理解に留まらず、倫理思想史的な考察を加えて相対化することで、和辻哲郎の影響を受け形成された倫理思想、他領域に及ぶ人文知をあわせて再考し、その成果を改めて倫理学的考察に還流させて、近代日本の倫理学的営為の意味を再検討し、かつ再構築することを目的とするものである。この目的にそい、研究初年次より、倫理学・倫理思想史研究の知見と文学・歴史学ほかの人文知の領域での「関係」についての思索を、統一的に理解するにあたっての方法と視点を一貫して追及してきた。 2019年度は、当初の計画通り、倫理思想史的研究に対象を広げ、とくに関係概念と超越性との関係にその視点を集中した。研究期間を延長した2020年度については、その問題意識を継続させ、とくに2019年度に着手した関係概念に一定の思想的痕跡を残すキリスト教思想を、その問題性をしめす典型とみて、研究発表をまとめた。2020年度は、研究論文としては「神に関係づけられる隣人愛に生きる」(クリスチャン新聞(2020年9月22日)を特集「いのちの危機の中でー教育と聖書」の一論文として(3000字)公表した。中国にて本研究と関わりの深い拙著の中国語訳が出版された。またこの間の研究の方法論的視点については、オンラインでの講演に台湾大学での「第7回全国研究生研習会<人文與社會科学對話的日本研究>」に招待を受け講演し「日本思想史研究の成立と展開ー人文科学と社会科学の間ー」のテーマで講演した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度については、これまでの3年間の研究計画に基づき、当初の計画通り、日本倫理思想研究における「関係概念」を超越的存在ないし超越的価値に対する心性のありかたという問題意識の分析をもってキリスト教的思想に立ち入ることを企図していた。予定通り研究が進んでそのまとめにとりかかった研究3年目の2020年2月に入りにわかに新型コロナウイルスの感染拡大があり、2020年3月開催予定であった台湾大学でのシンポジウムが2020年9月に延期になるなどあり、当初の研究計画に遅れが出た。この点はオンラインで発表を終えた。しかし、なお感染状況は好転をみせず、出張、資料調査が中断し、総括的なまとめを持って研究計画を締めくくることができず、当初予定されていた寄稿論文の出版が延期となるなど、2021年度に研究の総括的部分を先送りせざるを得なくなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究期間の延長を許された2021年度については、当初の計画通り、日本倫理思想研究における「関係概念」を超越的存在ないし超越的価値に対する心性のありかたという問題意識の分析をもってキリスト教的思想を扱うことを目指している。すでにその一部の構想を発表している「熊野神学」における関係概念を、あらためて和辻哲郎の神概念(「苦悩する神」)の問題意識と比較対照し、その対照において、「関係と超越性」という問題をほりさげ、本研究の総括的部分として、研究計画を完結させることを予定している。総括にあたり必要な資料・図書の収集閲覧について、2箇所の図書館での調査研究を実施するとともに、これまでの研究データベーズを作成することを目指す。
|
Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の拡大で、予定していた国内出張による資料調査が果たせず、また資料整理の研究補助者の雇用も順調にできなかったことが未使用分発生の理由である。本年度は、資料調査と資料の整理に使用する。
|