2018 Fiscal Year Research-status Report
「尊厳」と「意味」を二本柱とした生命の哲学・倫理学の基盤的研究
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17K02185
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
森岡 正博 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (80192780)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生命の哲学 / ペルソナ / 誕生肯定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に以下の3つの領域において研究の進展があった。まず第1に、人生の意味の哲学の領域において「独在的かつ肯定的アプローチ」の可能性を探究し、その大枠を確定することができた。この成果は北海道大学で開催された第1回「人生の意味の哲学」国際会議の基調講演にて発表された。この独在的かつ肯定的アプローチは、ニーチェに始まりフランクルにおいて展開されたものであるというのが私の見方であり、それを21世紀の分析哲学の議論に接続させる道を開くことができたと考えている。本発表は2019年に学術誌Journal of Philosophy of Lifeにて刊行される予定である。 第2に、申請者がかねてより提唱している「生命学」の方法論と、田辺元の「懺悔道の哲学」の方法論の比較研究を行ない、その告白的な方法においては共通点が見られるものの、「他力」の位置づけにおいて大きな差異が見られることを指摘した。これは本研究における「生命の尊厳」に関わる研究テーマである。ドイツのヒルデスハイム大学で行なわれた第4回欧州日本哲学会議にて発表を行ない、有益なディスカッションを行なうことができた。論文化することを目指しているところである。 第3に、本研究で継続的に考察してきた「ペルソナ論」について大きな展開があった。「ペルソナ」を「音波にならない声」として規定し、その「ペルソナ」の次元と並行して、「シェア」の次元というものが存立し得ることを示した。人の死においてまず「シェア」の次元が消滅し、その後に「ペルソナ」の次元が消滅するというプロセスがあり、それは生物学的な人間の死の規定とは一致しない。 以上が本年度の研究実績の概要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はおおむね予定通りに研究が進行した。論文を3編刊行することができ、学会発表を4本行なうことができた。学会発表のうち3本は国際学会であり、本研究の成果の国際的発信に寄与したと考えられる。研究内容も「意味」と「尊厳」の二本柱に沿って行なわれてきており、当初の予定通りと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は最終年度であり、本研究の総まとめを行なう予定である。まず、もっとも大きなイベントとして、申請者が代表者・大会長となって、第2回「人生の意味の哲学」国際会議を早稲田大学にて10月7日~9日のあいだ開催する。すでに国際公募は終了しており、訳50名の発表者が世界各地から参加することになっている。またこの分野の代表的論者である英国バーミンガム大学のユージン・ナガサワ教授、米国スクリップス大学のリフカ・ワインバーグ教授を基調講演者として招聘する。この学会の開催費用は本研究費にてまかなう予定である。本学会は本年度は北海道大学で開催された。来年度はそれを引き受ける形で申請者が責任をもって開催する。申請者自身も本学会にて研究発表を行なう。本科研費研究の総まとめを本学会開催にて行ないたいと考えている。 また、人生の意味に関連する「独在性」の哲学的探究を引き続き行ない、それを日本哲学史と接続させる試みを行なう。その研究成果を、8月に南山大学で開催される第5回欧州日本哲学会議、9月にバーミンガム大学で開催される国際セミナー、10月にハワイ大学で行なわれる日本哲学国際会議(予定)にて発表する。これらを通して、本研究をさらにその先へとつなげていく道筋を見極める。
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Causes of Carryover |
2019年度に、本研究の総まとめとして第2回「人生の意味の哲学」国際会議を申請者が代表・大会長として早稲田大学で開催することになったので、その開催費用(2名の基調講演者を海外から招聘するための旅費など)の一部を2018年度から2019年度に回す必要が出てきたため。 次年度使用額については、上記国際学会の開催費用(上記招聘旅費および学会運営謝金など)として使用する。現在、招聘の手続きを進めているところである。
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Research Products
(7 results)