2019 Fiscal Year Annual Research Report
Derrida's Deconstruction as Technological Ontology
Project/Area Number |
17K02188
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
藤本 一勇 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70318731)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脱構築 / 技術哲学 / 存在論 / メディア論 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、前年度までの成果をふまえ、デリダの技術存在論のもつ、現代の情報メディア環境への介入可能性を研究した。本研究は、伝統的に技術と対立的に考えられてきた存在概念が、その超越論的な構造上、技術的である(特に遠隔的存在である)ことを、デリダにおけるエクリチュールやテクスト、差延や散種といった基礎概念(戦略素)を通して明らかにしてきた。一見古風に見える文字や文献といった媒体を軸にしてデリダが抉り出した遠隔存在論の視座は、高度に発展したデジタル・メディア時代においても多くの場合有効である。主客二元論を超えた非実体的関係性(メディア性、espacement)がデジタル複製技術によって直接性の増強に至るように見えるとき(これはデリダ的な観点から見れば、デジタルな「現前の形而上学」にほかならない)、デリダが技術の根源構造として「ずれ」や「遅れ」を指摘し、またそれらが権力と自由の戦場であると捉えていることは重要である。デジタル・コンピューティングによるものも含め、すべての情報やメディアを「テクスト=遺書」として「読む」活動や訓練を、世界の開放性へ向けた根本作業として、「来たるべき人文学」として再構築(伝統的人文学の脱構築形態)する可能性、これをデリダは訴えている。 こうした文脈で、最終年度は、マクルーハン、ベンヤミン、ドゥブレの「メディオロジー」、ヴィリリオの「速度学」、ウィリアム・ギブソン、アフォーダンス理論、ダナ・ハラウェイの「サイボーグ・フェミニズム」等々とデリダの技術存在論とのあいだの「可能な」比較検討・対話をおこなった。そこから見えてきたのは、デリダのテクスト主体の特異性、情報の海(これ自体がデリダにとってまさしく「テクスト」である)に溺れることなく、水面から上昇するでも沈没するでもなく、たゆたいながら「抵抗」し「反抗」し続ける特異なテクスト主体の在り方である。
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Research Products
(8 results)
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[Book] 存在と出来事2019
Author(s)
アラン・バディウ著、藤本一勇訳
Total Pages
656
Publisher
藤原書店
ISBN
4865782508
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