2018 Fiscal Year Research-status Report
神仏共存神話の原理に関する倫理学的研究―日本思想の基軸の解明―
Project/Area Number |
17K02189
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
上原 雅文 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (30330723)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柏木 寧子 山口大学, 人文学部, 教授 (00263624)
吉田 真樹 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (20381733)
栗原 剛 山口大学, 人文学部, 准教授 (50422358)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 神 / 仏 / 神仏共存 / 愚管抄 / 慈円 |
Outline of Annual Research Achievements |
共同研究では、昨年度に引き続き『愚管抄』における解釈上の問題点を研究会で議論し、流布している現行の現代語訳・注釈の誤りや問題点を指摘するとともに、新たな現代語訳を完成させ、巻第七についての作業をほぼ完了させた。「道理」などの用語索引ができるように全文のデータ化も完成させた。 個別研究は以下である。研究代表者・上原は、日本思想の基軸を剔出すべく、仏教移入以前の神観念が仏教や儒学の受容によってどのように変容しつつも持続していったのかについての原理的な整理を試み、論文を執筆した。また、論文では論じなかったが、『愚管抄』の神仏共存神話と中世神道理論および中世神話との原理的な比較考察も行った。 研究分担者・柏木は、昨年度に続き、慈円の思想の先駆的表現が見られる『今昔物語集』を読解し、天竺部仏伝の転法輪相の中でも大きな比重を占める巻第二の譬喩譚に即し、衆生を阿羅漢たらしめる仏の智慧の内実やその獲得過程、行使様態について検討した。あわせて最初の本格的仏伝とされる『今昔物語集』の成立背景についても整理・考察した。 分担者・吉田は、中古の『源氏物語』から中世・近世の説経節や浄瑠璃に至る語りの本質について考察した。日本における物語形式は、仏伝由来の個という観点を、歴史書由来の編年体という方法で語ることにより、壮大な歴史を描くようでいながらも、あくまで個に重きが置かれていくものであるとした。成果として学会発表1本と論文執筆1本を行った。 研究分担者・栗原は、『愚管抄』に表現された武士の現存を探るための足がかりとして、後世の武士道書(『葉隠』)に対する読解を進めた。また、神仏観念をめぐる原理的考察への一助として、近松世話浄瑠璃における主人公の情死の内実と、これに対する仏教的救済とをつなぐ摂理について、倫理学的観点からの考察を行い、その成果を学会発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『愚管抄』の現代語訳については、今年度末までにほぼ巻第七についての作業が終わった。当初の研究計画に従った一定の成果を上げている。やや遅れ気味であるが、それはテクストの難解さに由来する。
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Strategy for Future Research Activity |
写本を取りそろえること。巻第七については、作業を終えてリポジトリにて公表する。また、『愚管抄』特有の神仏共存神話についての仮説を提示する。
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Causes of Carryover |
比叡山延暦寺周辺の実地調査を中止し、研究会2回のみの開催としたため。また、最終年度の収入額が少ないため、書籍代などを残した。また最終年度としての研究成果をまとめるために研究会の日数を増やす予定である。
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