2020 Fiscal Year Annual Research Report
The Actuality of Russell's Neutral Monism
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17K02190
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Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
高村 夏輝 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (60759801)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ラッセル的一元論 / 現象的意識 / 結合問題 / 汎心論 / 汎質論 / ラッセル的物理主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、最終年度であることを踏まえ、現時点で到達した見解を論文にまとめた。それが論文「ラッセル的一元論としての素朴実在論」である。その内容は以下の通りである。 ラッセルの中性的一元論の中核的アイデアは、「物理学が実在の関係構造のみを描出しているのに対し、意識の内容が内在的性質であるため、両者はそのまま整合的に組み合わせ、一元論の立場を保持できる」というものである。この核となる見解をを引き継ぐ立場である「ラッセル的一元論」は、それによって現象的意識の問題を解決しようとする。ラッセル的一元論には、ラッセル的物理主義、汎心論、汎質論の三つの立場があるが、上記論文ではこれらを批判的に検討し、そのいずれもが何らかの問題を抱えており、満足のいくものではないことを明らかにした。ラッセル的物理主義には、実在の内在的性質を現象的性質ではないとしつつ、それが物理的性質であると規定することはできないという問題がある。そこで汎心論と汎質論のいずれかを採るべきであるが、汎心論には、結合問題という極め付きの難問がある。汎心論が措定する意識主体についての消去主義を採用し、汎質論を採ればこの問題は解決できる。しかし汎質論にも、構造に関する結合問題があり、これを解決することはきわめて困難である。 以上のように問題の所在を明らかにしたうえで、本論文では、中性的一元論・ラッセル的一元論の核となるアイデアを保ちつつ、意識に関して素朴実在論的立場を採用することによって構造に関する結合問題が解決できることを示した。 このように、ラッセル的一元論の中では、上記論文で提唱した素朴実在論的な立場が最も有望なものであることが明らかになった。
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Research Products
(1 results)