2017 Fiscal Year Research-status Report
A comparative study of the concept of "compassion" in animal ethics among contemporary Western European sphere and Japanese philosophy after the 20th century
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17K02199
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Research Institution | Nagano National College of Technology |
Principal Investigator |
鬼頭 葉子 長野工業高等専門学校, 一般科, 准教授 (00756554)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 動物倫理 / 宗教哲学 / 憐れみ / ヌスバウム / 西谷啓治 / ティリッヒ / デリダ / ロヴィン |
Outline of Annual Research Achievements |
<研究実績1 欧米圏の動物倫理における「憐れみ」概念と宗教思想の関係の解明> 上記の研究潮流を踏まえ当該年度は、シンガー/リーガン以後、欧米圏において動物倫理に関する議論をけん引してきた哲学者、倫理学者、キリスト教神学者による代表的論考を精査し、そこに通低する「憐れみ(compassion、Mitleid、agap?)」概念の特徴を抽出した。本研究成果は、論文、口頭発表、招待講演として公表した。さらに、動物倫理思想と宗教哲学・キリスト教思想との関わりについて根源的に考察を進め、論文を発表した。 <研究実績2 研究成果の発信/海外研究者との連携> 動物倫理における「憐れみ」概念と宗教思想、ことに日本哲学との比較思想研究を行い、国際学会にて、成果を発表した。また、米国アパラチア州立大学のキャロル・クライン准教授との動物倫理に関する共同研究プロジェクトを推進し、その研究成果をRoutledge社より共著“Tourism Experiences and Animal Consumption: Contested Values, Morality and Ethics (Routledge Research in the Ethics of Tourism Series)”として出版した。 <研究実績3 海外の優れた動物倫理文献の邦訳> ライアン・P. マクローリンの動物倫理に関する著作″Christian Theology and the Status of Animals″ の邦訳を開始した。また、2018年度に出版が予定されている『生命倫理百科事典』の一部項目について、翻訳を行った。 <研究会実施> 研究計画どおり、京都大学大学院応用哲学・倫理学教育研究センター(CAPE)において「人と動物の倫理研究会」を開催し、討論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「<研究計画1> 欧米圏の動物倫理における「憐れみ」概念と宗教思想の関係の解明」については、計画どおり進捗した。具体的には、シンガー/リーガン以後、欧米圏において動物倫理に関する議論をけん引してきた哲学者、倫理学者、キリスト教神学者による代表的論考を精査し、そこに通低する「憐れみ(compassion、Mitleid、agap?)」概念の特徴を抽出することができた。また研究成果を、論文、口頭発表、招待講演において発表した。 「<研究計画2> 研究成果の発信/海外研究者との連携」については、計画どおり進捗した。具体的には、国際学会Minding Animals Conference 4(開催年月:平成30年1月。開催地:メキシコ合衆国メキシコシティ)において、動物倫理における「憐れみ」概念と宗教思想に関する研究成果を発表した。また、米国アパラチア州立大学のキャロル・クライン准教授との動物倫理に関する共同研究プロジェクトを推進し、その研究成果をRoutledge社より共著として出版した。 「<研究計画3> 海外の優れた動物倫理文献の邦訳」については、一部計画を変更して進めた。具体的には、「人と動物の倫理研究会」のメンバーである連携研究者と協議し、本研究テーマに沿う海外の優れた動物倫理に関する研究文献(ライアン・P. マクローリンの動物倫理に関する著作″Christian Theology and the Status of Animals″)の邦訳を開始した。邦訳作業は平成30年度も継続して実施している。当初の計画に加えて、2018年度に出版が予定されている『生命倫理百科事典』の一部項目について、翻訳を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度: <研究計画1> 京都学派を中心とした日本の哲学者、倫理学者の「憐れみ(慈悲、大悲)」による代表的論考を精査し、彼らの思想の背景にある宗教哲学・仏教思想について解明する。<研究計画2> 研究成果の発信/海外研究者との連携: 国際学会において研究発表を行い、海外研究者との議論・連携を深める。<研究計画3> 海外の優れた動物倫理文献を邦訳する。 平成31年度: <研究計画1> 日本および欧米圏における動物倫理の差異について、動物との関わりの歴史や文化背景にまで踏みこんで比較研究を行う。また、平成30年度までの研究成果を踏まえ、「憐れみ」概念を鍵とした欧米圏における動物倫理の宗教思想的背景と日本の宗教哲学との比較思想研究を進める。さらに、日本の「動物観」を問いつつ、日本の風土に合致した新たな動物倫理の構築可能性を探る。<研究計画2> 国際学術誌へ研究成果を投稿し論文掲載を目指す。さらに、京都応用哲学・倫理学教育研究センター(CAPE)のプロジェクト「人と動物の倫理研究会」での活動記録をまとめ、可能であれば研究会参加メンバーの寄稿による書籍出版を検討する。 研究体制: 引き続き、京都大学大学院応用哲学・倫理学教育研究センター(CAPE)において「人と動物の倫理研究会」を主宰し、研究会を開催する。本研究会は関東圏の哲学者、倫理学者、実務家が動物倫理について共に学び、討議する場としてよく機能している。応募者は研究会を引き続き主宰しつつ、本研究テーマについても研究会を足場とし、国内研究者と議論を深める。また、連携研究者とも協力しつつ進める。
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Research Products
(7 results)