2018 Fiscal Year Research-status Report
生成の実在性と純粋な関係性をめぐるベルクソン哲学の研究
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17K02200
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Research Institution | National Institute of Technology, Kumamoto College |
Principal Investigator |
永野 拓也 熊本高等専門学校, 共通教育科(熊本キャンパス), 教授 (80390540)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生成 / 数学的構造 / 関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
【2018年度】①2017年度開催のシンポジウム「『物質と記憶』を再起動する;拡張ベルクソン主義の諸展望」のアクトが刊行される(平井靖史・藤田尚志・安孫子信 編 タイトルはシンポジウムのタイトルと同一、書肆心水、2018年12月刊行)。研究代表者の論文「関係と偶然」-『物質と記憶』をめぐる「持続」解釈の試み」が掲載されている(pp. 363-385.)。②9月の日仏哲学会およびベルクソン哲学研究会に参加した。ベルクソン哲学研究会では、2019年度の本科研費による国際研究会の、ベルクソン哲学研究会との共催化について打診した。これを布石とし、2019年3月末のベルクソン哲学研究会において、本研究による国際研究会をベルクソン哲学研究会と共同開催とすることについて承認を得た。③3月初旬に渡仏。ナンテール大学主催の国際研究会(Philosophie contemporaine au Japon et en France PASSAGES PHILOSOPHIQUES III)に参加した。研究協力を依頼している同大学のElie During氏の勧誘による。ここでは、前年度のシンポジウム発表について、部分・全体の関係について理論的な補強を行い、かつ論旨を簡潔にした内容の発表を行った(タイトル:Le tout et ses parties : remarques sur la duree bergsonienne)。またこの渡仏の際、上記のDuring氏、およびトゥールーズ大学のSebastien Miravete氏と、2019年度の研究の打ち合わせを行い、ベルクソン哲学と数学的関係との接点をめぐり、日本で9月に研究会を行う計画の具体案を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書「各年度計画」の2018年度分については、【文献の範囲】のうち、a(ベルクソン哲学の解釈の面:ベルクソンの第2著作『物質と記憶』と、これに続く時期の講義や、派生する講演など)、c(科学認識論的な側面:ニューラルネットをモデルとした記憶理論)、d.(科学理論の面:精度の高い識別と記憶を可能にする確率論的な装置についての理論)に関する研究は、2017年度のシンポジウムにおける発表ですでに着手している。2018年度は、これらを踏まえて、より形而上学的な観点から、ベルクソンの持続・記憶の理論と、論理・代数学的形式(メレオロジー)との距離を探った。2018年度の【活動の概要】の「国内外専門誌への投稿」は果たせなかったが、前年度の発表のアクトへの掲載の形で研究成果を発表することができた。また「国内開催の研究会・国際学会への参加」に掲げておいたとおり、「京都宣言」提議者の一人、Elie During が主催する国際研究会において発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
計画書には【文献の範囲】として、「a.ベルクソン哲学の解釈の面:ベルクソンの第3著作『創造的進化』と、これに先立つ時期の講義録、続く書簡やそこから派生する講演など」を挙げておいた。『創造的進化』に先立つ時期の「時間観念の歴史」講義の本研究にとっての重要性が確認できたため、今年度はその検討を行う。この検討は「e.哲学史的な側面」のうち、とくにライプニッツの哲学に対するベルクソンの態度を探る意味でも重要である。「b.科学史的な側面」で掲げた確率論の同時代的な意義や、「c.科学認識論的な側面」で掲げた確率論への意味論的・形而上学的な切込みについては、解釈の傍証を導く形で参照したい。「d.科学理論の側面」に掲げた確率論の幾何学的・解析的な基礎については、ベルクソンの理論の奥行を測るうえで参照を続ける。【研究活動の概要】については、Elie DuringとSebastien Miraveteを日本に9月末に招聘し、ベルクソン哲学研究会との共催の形で、東京大学いおいて研究会を実施することを計画している。またPaul-Antoine MiquelとElie During が主催するフランス・トゥールーズにおけるシンポジウムに10月末に参加することを予定している。これらの発表のいずれかについて、国内の専門誌への投稿を計画している。
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Research Products
(2 results)