2017 Fiscal Year Research-status Report
Study about creation of thinking tradition in modern East Asia
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17K02204
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
末岡 宏 富山大学, 人文学部, 教授 (10252404)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 信昭 富山大学, 人文学部, 教授 (50206512)
中 純夫 京都府立大学, 文学部, 教授 (50207700)
田畑 真美 富山大学, 人文学部, 教授 (80303197)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 国学 / 近代 / 中国 / 日本 / 朝鮮 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の国学について、明治時代後半、帝国大学(東京大学)哲学科において、井上哲次郎を中心として日本の中国哲学つまり中国でいう「国学」についての研究が進められたこと、またその影響について明らかとなった。1900年頃、井上哲次郎を中心に日本の従来の漢学の成果をまとめようとする運動があった。その著作としては井上哲次郎・蟹江義丸の『日本倫理彙編』全10巻(1901-1903)0がまずあり、この著作の実際の編集作業はほとんど蟹江義丸が一人で行っている。この『日本倫理彙編』の作業を踏まえて、井上哲次郎の日本儒学三部作(『日本陽明學派之哲學』(1900)『日本古學派之哲學』(1902)『日本朱子學派之哲學』(1905))、蟹江義丸『孔子研究』(1904)等が著されている。『孔子研究』は、日本国内でも高く評価され、再版が出版されている。また民友社の山路愛山の『孔子論』(1905)で批判されているが、これはその影響の大きさを示すものである。更に『孔子研究』は中国において、王国維、梁啓超、錢穆という当時を代表する「国学」者によって翻訳されたが、これは『孔子研究』が従来の漢学の成果を踏まえた上で、西洋哲学の視点からの分析をおこなっているからだと考えられる。日本の「国学」とは異なる「近代化」された中国哲学研究が中国においては新しい「国学」だと評価されたわけである。つまり東アジアにおける伝統思想を考える場合には、従来の「国学」だけではなく「漢学」あるいは「中国哲学」「東洋哲学」等、範囲を広げて考える必要があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中国の国学について、研究分担者中が研究協力者の協力のもとに先行研究の目録を作成した。 朝鮮の国学について、朝鮮の国学研究の現状を確認し、次年度の方針を定めた。 日本の国学に関しては研究論文を作成し、発表の予定であり、引き続き研究を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
中国の国学については、先行研究の目録をWEBで広く公開し、その成果を踏まえて研究を進める予定である。 朝鮮の国学については、研究協力者の協力のもと、先行研究をまとめ、更に韓国に赴き文献収集を行う。 日本の国学について、研究協力者の協力のもと先行研究をまとめる。また1900年前後に大量に来日した留学生・亡命者への日本の国学・漢学の影響を分析する。
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Causes of Carryover |
本年度は京都大学で文献調査を行い、複写をする予定であった。しかし当該文献(『蟹江義丸氏遺稿』)は京都大学附属図書館では貴重書であり、複写には著作権者がいる場合その許諾を得る必要がある。特に書簡について、発信人を調査し、宇野哲人氏の著作権が残っていることが判明したため、29年度中に許諾を得ることができなかった。そのため複写費(マイクロフィルム撮影費)が残った。また、韓国の文献調査を予定していたが、研究分担者が多忙であったあっため29年度中に調査にいけず費用が残ってしまった。
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