2018 Fiscal Year Research-status Report
Study about creation of thinking tradition in modern East Asia
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17K02204
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
末岡 宏 富山大学, 人文学部, 教授 (10252404)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 信昭 富山大学, 人文学部, 教授 (50206512)
中 純夫 京都府立大学, 文学部, 教授 (50207700)
田畑 真美 富山大学, 人文学部, 教授 (80303197)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 国学 / 近代 / 日本 / 中国 / 朝鮮 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度日本の国学について、明治時代後半、帝国大学(東京大学)哲学科において井上哲次郎を中心として日本の中国哲学つまり中国でいう「国学」についての研究が進められたことが明らかとなった。その中で蟹江義丸について研究した。『日本倫理彙編』は井上哲次郎との共著ではあるが、井上哲次郎はアイデアを提供しただけで、具体的な作業は蟹江義丸がそのほとんどを行った。蟹江義丸はもともとカント哲学を研究していたが、大学院に入学する際に井上哲次郎が指導教官となり東洋哲学を研究題目としたものである。蟹江義丸は幼少から富山で漢学を学んでおり、その知識を生かしたものである。井上哲次郎の日本儒学三部作は日本倫理委編の成果を利用している、また蟹江義丸『孔子研究』は、日本国内でも評価されたが、中国において、王国維、梁啓超、錢穆という当時を代表する「国学」者によって翻訳されている。これは『孔子研究』が従来の漢学の成果を踏まえた上で、西洋哲学の視点からの分析をおこなっているからである。つまり日本の「国学」とは異なる文脈での「近代化」された中国哲学研究が、中国においては新しい「国学」だと評価されたわけである。つまり東アジアにおける伝統思想を考える場合には、従来の「国学」だけではなく「漢学」あるいは「中国哲学」「東洋哲学」等、範囲を広げて考える必要があることがわかった。 日本と中国の「国学」は、直接つながっているのではないが、「それぞれの国独自の学術」という意味内容が日本から中国に流入したが、中国の国学は日本の「国粋主義」に影響を受けている。また国学の内容に関して、日本の西洋哲学研究の影響を受けた中国哲学研究が利用されたことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中国の国学について、研究分担者中が研究協力者の協力のもとに作成した先行研究目録を整理し発表できるよう準備をした。 朝鮮の国学について、鈴木が川原の協力のもと国学研究について研究を進めている。 日本の国学に関しては末岡が研究論文を作成し発表し、田畑と共同して更に研究を進める予定である。 ただし、本年度は末岡が9月末に病気になったため、十分に研究を進めることができなかったが、次年度は引き続き研究を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
中国の国学については、先行研究の目録をWEBで広く公開し、その成果を踏まえて研究を進める予定である。 朝鮮の国学については、研究協力者の協力のもと、先行研究をまとめ、更に韓国に赴き文献収集を行う。 日本の国学について、研究協力者の協力のもと先行研究をまとめる。また1900年前後に大量に来日した留学生・亡命者への日本の国学・漢学の影響を分析する。
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Causes of Carryover |
研究代表者末岡宏が9月から10月にかけて、脳梗塞を発症した。そのため、10月以降に予定していた謝金業務、研究打ち合わせ、研究調査旅行を実施することが困難になった。そのため、該当する業務を次年度に実施することとし、繰り越すこととした。
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Research Products
(1 results)