2017 Fiscal Year Research-status Report
江戸後期における陽明学文献の研究 ―佐藤一斎と大塩中斎を中心に―
Project/Area Number |
17K02209
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
永冨 青地 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50329116)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 佐藤一斎 / 大塩中斎 / 日本陽明学 |
Outline of Annual Research Achievements |
江戸時代の後期においては、佐藤一斎および大塩中斎(平八郎)らが、中国より長崎に渡来した陽明学関係の書籍を利用して、中国本国と比較してもより精密な文献学的研究に基づき、陽明学の研究を行っている。しかしながら従来の研究においては、佐藤一斎に関しては、思想面で見るところが少ないとされ、一方で大塩中斎に関しては、反乱に向かったその思想の反逆性のみが注目され、彼らがいかにして陽明学の文献を研究し、その思想を解釈してきたかについて、具体的に検討されることは極めて少なかった。本研究においては、従来注目されることの少なかったこれらの原資料の調査・研究に基づき、佐藤一斎および大塩中斎を中心とする江戸後期の学者が、中国より渡来した新資料に基づき、王陽明の思想文献を、いかにして分析していったのかを、具体的に考察していきたい。
平成29年度においては、東京都立中央図書館・大阪府立中之島図書館・尊経閣文庫・天理図書館・静嘉堂文庫などの図書館、博物館に所蔵されている、佐藤一斎・大塩中斎の著作および資料の調査を行い、その文献的な価値を究明すると同時に、その由来や収蔵の歴史について考察してきた。特に、各地に所蔵されている、写本を含む資料の調査の際に、その中に含まれている書き入れ、序跋題識、訓点などの考察により、これらの文献がどのように読まれていたかについても分析を行った。さらに、江戸期におけるその他の学者による、陽明学関係の注釈書や概説書などの資料も収集し、佐藤一斎および大塩中斎の思想が、それらの著作に対してどのような影響を与えているのかについても考察してきた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度においては、日本国内の各所蔵機関での調査はほぼ順調に進んできたが、資料はほとんど写本であるため、翻刻の作業がやや遅れている。現在関係資料の翻刻を引き続き行っており、平成30年度の前半に完成させる予定であり、年度内での公開が期待できるものと思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度における調査の結果として、各地に所蔵されている佐藤一斎および大塩中斎の著作および資料の悉皆目録を作成したが、平成30年度においては前年度に引き続き、各地の図書館・文庫に所蔵されている、彼ら両名の著作を詳しく調査し、彼らが陽明学関係の和刻本を作成した際に基づいている中国版との比較を行い、和刻本の底本とそのテキストとしての特徴を明らかにする予定である。また、前年度において開始した、江戸期の儒学者による、佐藤・大塩両名についての言及を有する著作などの資料の調査も完成させるとともに、それらの著作の分析を行い、それらにおいて語られている彼ら両名の思想に対する評価についても分析を進めていくこととする。
|
Causes of Carryover |
地方の図書館の調査の一部は遅れているため、10万円程度の次年度使用額が生じた。それについて、今年度の八月に実施する予定である。
|
Research Products
(8 results)