2018 Fiscal Year Research-status Report
江戸後期における陽明学文献の研究 ―佐藤一斎と大塩中斎を中心に―
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17K02209
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
永冨 青地 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50329116)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 佐藤一斎 / 大塩中斎 / 大学古本傍釈 |
Outline of Annual Research Achievements |
江戸時代の後期においては、佐藤一斎および大塩中斎(平八郎)らが、中国より長崎に渡来した陽明学関係の書籍を利用して、中国本国と比較してもより精密な文献学的研究に基づき、陽明学の研究を行っている。しかしながら従来の研究においては、佐藤一斎に関しては、思想面で見るところが少ないとされ、一方で大塩中斎に関しては、反乱に向かったその思想の反逆性のみが注目され、彼らがいかにして陽明学の文献を研究し、その思想を解釈してきたかについて、具体的に検討されることは極めて少なかった。本研究においては、従来注目されることの少なかったこれらの原資料の調査・研究に基づき、彼らが、中国より渡来した新資料に基づき、王陽明の思想文献を、いかにして分析していったのかを、具体的に考察していきたい。 平成30年度においては、東京都立中央図書館および大阪府立中之島図書館に所蔵されている、佐藤一斎・大塩中斎の著作および資料の調査を行い、従来、十分にその価値が認識されてこなかった、佐藤一斎・大塩中斎の自筆稿本について、文献学的考察のみに止まらず、そこからうかがうことのできる彼らの陽明学理解についても考察を行った。その成果は平成30年10月28日に香港浸会大学において行われた第二届儒家経典的跨域伝釈国際学術研討会において、「王守仁『大学古本傍釈』在日本的接受情況;以佐藤一斎与大塩中斎為中心」と題して研究発表を行うことができた。本発表は、国際学会において中国語で行われたため、従来この問題について知ることのなかった香港の学者から、一定の反響を得ることができた。 また、本発表の内容は、同年11月に南京大学によって刊行された、「第三回「南京論壇」国際フォーラム論文集」において活字化され、中国大陸の学者に対しても、この問題に対する知見を広めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度においては、研究成果を香港および中国において発表することができたが、日本国内に対する研究成果の公開がやや遅れている。 次年度においては、研究成果を日本国内において活字化し、公開することが目標となるが、すでに汲古書院より刊行予定の論文集に対して原稿を提出済みであるため、この目標は間違いなく達成しうるものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までにおいて、各地に所蔵されている佐藤一斎および大塩中斎の著作および資料の精査を行ってきたが、次年度においても引き続き、各地の図書館・文庫に所蔵されている、彼ら両名の著作を詳しく調査し、彼らが陽明学関係の和刻本を作成した際に基づいている中国版との比較を行い、和刻本の底本とそのテキストとしての特徴を明らかにする予定である。 また、その成果は日本語及び中国語の論文として公開することとなる。
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