2021 Fiscal Year Research-status Report
江戸後期における陽明学文献の研究 ―佐藤一斎と大塩中斎を中心に―
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17K02209
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
永冨 青地 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50329116)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 佐藤一斎 / 陽明学 / 文献学的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
明代の著名な儒学者である王守仁(王陽明)の学問の、朱子学からの独立宣言であり、佐藤一斎が多大な関心を寄せた『朱子晩年定論』の清代における受容について、日本国内に現存する版本に関してまとめたものが「王復礼編『三子定論』について―清代における『朱子晩年定論』の受容―」(『汲古』第80号、pp.32-36、2021.12月)である。本論文は、従来全く取り上げられたことの無い東北大学に現存する同書の版本に関する専論として、幸い大方よりの好評を得ることができた。 また、佐藤一斎の業績について言及のある、中国における代表的な王守仁に関する研究である、陳来氏の研究に対する、以下のような書評も執筆している。「評陳来著『有無之境―王陽明哲学的精神』」、『現代儒学』第9輯、pp.249-259、商務印書館、2021.12)。本書評に関しては、日本の研究者による独自の立場からの書評として、中国において一定の反響を得ることができた。 さらに、 佐藤一斎の、昭和期日本の陽明学研究者である安岡正篤に与えた文献学的な影響に関しては、「語られざる陽明学者―安岡正篤について―」(『環日本海研究年報』27、pp.1-7、新潟大学現代社会文化研究室環日本海研究室、2022年3月)において、従来アカデミズムの世界においてあまり言及されることの無かった安岡の研究について、時代ごとの変化を追って、詳細な紹介を行った次第である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までの研究状況はおおむね順調に進行しているものの、コロナ禍により、日本内外での資料調査、殊に中国での資料調査を行うことができず、資料調査に基づき分析を行うはずだった部分について、遺憾ながら進捗に遅れが存在している。 関係する部分の研究については、国内の研究機関の蔵書で不完全ながら代替できる部分があるかどうかについて調査中であり、できる限り研究結果に影響が出ないように鋭意検討しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のような客観情勢によって、中国での資料調査の再開時期を見通すことができないでいるため、計画においては中国国内での調査および複写を行うはずだった部分について、国内の研究機関の蔵書で不完全ながら代替できる部分があるかどうかについて調査中であり、できる限り研究結果に影響が出ないように鋭意検討しているところである。 その結果として、国内部分の資料に関する分析が、計画当初よりも多くの比重を占めることになることが予想される次第である。
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Causes of Carryover |
本研究に必須の資料である、古典籍の閲覧のための交通費、複写の経費として上述の金額を計上した次第である。
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