2019 Fiscal Year Research-status Report
The rise of Prasangika-Madhyamaka and transmission of its thought
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17K02214
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
吉水 千鶴子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (10361297)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中観思想 / 中観派 / 中観帰謬派 / 中論 / 中観明句論 / 帰謬論証 / 他生の否定 / 中観自立論証派 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度はインドからチベットへの中観帰謬派の思想伝承過程と「帰謬派」を自認する論師たちの出現の解明のため、継続してパツァプ・ニマタク(11~12世紀)著『根本中論般若釈』第1章(1b-17a)とその弟子シャン・タンサクパ(12世紀)著『中観明句論註釈』第1章後半26b-40bを用いて、インドの中観派論書と比較しながら次の研究を行った。 1 パツァプは先行する8世紀のインド人中観派シャーンタラクシタ、カマラシーラの中観思想を「自立論証派」の思想と位置付け、それに対してチャンドラキールティに従う自分たちの思想的立場を「帰謬派」と称した。これをもって自立論証派と帰謬派の分岐が歴史的事実となったと解することができるのではないかという仮説を立てた。 2 インドにおける帰謬思想の祖と考えられる7世紀のチャンドラキールティの中観思想をパツァプ、シャン・タンサクパは12世紀の思潮に合わせて新しく解釈し直した。それはシャーンタラクシタたちの自立論証派の中観思想より優れたものと位置づけされた。 3 帰謬論証も7世紀以降の仏教論理学の規則に即して定義し直された。 これらの研究成果は9月の日本印度学仏教学会学術大会で発表、英語論文として『印度学仏教学研究』68号3巻に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題「中観帰謬派の出現とその思想伝承」の目的である「中観帰謬派」を自覚する論師たちが出現する契機とプロセスについて仮説を立てることができた。また、それを論文の形で発表することができた。ただ、コロナウィルスの世界的感染拡大による渡航制限により、3月に予定されていたオーストリア科学アカデミーとの研究会が中止され、同分野の研究者との議論の機会を持てず、さらなる検証を引き続き行っていくことになった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、次の点の検証を行う。 1 パツァプ・ニマタク著『根本中論般若釈』第1章(1b-17a)に引かれる仏教と非仏教の諸学説のソースをインドの文献に確認する。 2 その中で特にシャーンタラクシタ、カマラシーラの影響を確認する。 3 この問題を内外の研究者の協力を得て検証する。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの世界的感染拡大の影響により、3月に予定されていたオーストリア科学アカデミーにおける研究会が中止となり、そのための旅費が使用できなかった。この研究会は次年度に延期され、ウィルス感染が収束した時に実施する計画である。
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