2020 Fiscal Year Research-status Report
Identification of transmitters of Sanskrit manuscripts to Himalayan area and their footsteps
Project/Area Number |
17K02222
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
加納 和雄 駒澤大学, 仏教学部, 准教授 (00509523)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 梵文写本 / ヒマラヤ地域 / カシュミール / 伝来経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請時の計画に沿って、「チベット語伝記・歴史書中の梵文写本への言及の事例蒐集と分析および研究総括」について遂行を目指したが、新型コロナウイルスの感染拡大にともない、計画の一部について延期を余儀なくされた。 伝来径路の同定について、中世ヒマラヤ世界において隊商のトレーディングルートとして用いられていた旧街道の地理データを回収して、上記で確認した地点を手掛かりに特定する予定であったが、十分に進めることができなかったため課題となる。 いっぽうで、9~10世紀ころのインド西海岸部(コンカン)、スリランカ、インドネシアの海洋航路を通じた密教流伝のネットワークについては、昨年度「聖大乗真言理趣とジャヤバドラ:中世インドネシアの密教儀礼次第とその背景」(『密教文化』244)において発表したが、その考察をさらに深めると、当該のネットワークが後にチベットにも拡大したことを示唆しうる記述が確認され、今後慎重な検討を要する。 また西チベットに滞在したマハージャナ(11世紀)の著作を同定し、父サッジャナから受け取った書簡の解読を進め、カシュミール・チベットの人的交流の一端をより詳しい形で明かすことができた。 梵文写本の解読研究を続け、『倶舎論安慧疏』業品の読解研究(ヨビタ・クラマー氏らとの共同研究)、『ナヤトラヤプラディーパ』、『ナヤトラヤベーダ』、『牟尼意趣荘厳論』などの顕密論書の読解研究(李学竹氏との共同研究)、『アームナーヤマンジャリー』、『パドミニー』、『サマーヨーガ・タントラ』などの密教典籍の読解研究(苫米地等流氏、種村隆元氏、倉西憲一氏らとの共同研究)、サッジャナとマハージャナらによる弥勒論書注釈文献群の解読を継続し、各成果を論文にまとめた。最後の一点の中には、『郁伽長者所問経』や『如来秘密経』などの梵文佚文が回収された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大にともない、計画の一部について延期を余儀なくされたため。
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Strategy for Future Research Activity |
梵文写本をチベットに請来した人物の同定と伝来径路の同定について引き続き調査を遂行する。研究が当初の計画どおりに進まない場合、その原因としてまず予想されるのは、人物および径路の同定作業に手がかりとして使用する史料の信頼性のゆらぎである。この問題を解決するためには、その史料から独立した、碑文などの手がかりによって信頼性を補完する必要がある。そして史料の信頼性を検証するための別史料の検証といった種類の作業を行う場合には、その作業が循環しないようフローチャートを作成して視覚的に見通せる状態を用意しておく必要がある。以上の手続きを通じて調査上の不十分な点を補完し、本課題「ヒマラヤ地域における梵文写本の請来者および伝来経路の同定」を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により、当初予定していた海外の研究者との交流をはじめとする研究計画を予定通りに遂行することができなかったためである。 使用計画は、感染拡大がなお続く本年度において、海外渡航などがなお困難である状況がつ続くことも予想しつつ、オンラインによる交流などの代替手段を駆使して、当初の研究計画の遂行をめざす。
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