2017 Fiscal Year Research-status Report
社会主義期ポーランドにおけるカトリック教育:政治・社会変動のダイナミクスとして
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17K02228
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
加藤 久子 國學院大學, 研究開発推進機構, 研究員 (10646285)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 公共宗教論 / 宗教教育 / 学校外教育 / 世俗化 / 宗派化 / 非聖化 / 無神論教育 / カトリック |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、社会主義政権下のポーランドにおける政教関係について、カトリック教育に焦点を当てて分析するものである。本年度は、1.社会学における宗教研究の知見と、歴史学のそれとをいかに関連付けられるかという観点からの理論的検討、2.一次史料に基づく社会主義期の宗教教育と無神論教育と連関に関する実証的研究、3.マイノリティ教育に関する史料を用いた「2」の相対化、の3点を中心に進めた。 1.について、宗教社会学分野で行われて来た政教関係史や公共宗教論に関する文献研究を進めつつ、従来歴史学(特にドイツ史)において用いられてきた宗派化と世俗化という枠組みが東欧史研究に適用できるかという視点から検討を行い、『東欧史研究』に寄稿した。 また予定外に、本研究課題が対象とする時期と同時期に進展したアジア(台湾)の近代化と宗教の関係に関する論文を翻訳する機会があり、比較の視点から大きな示唆を得ることができた。 2.について、9月と3月にワルシャワ市の国立公文書館において史料収集を行った。9月には、前年までにある程度目を通していた公教育におけるカトリック教育に関する史料について、ほぼすべての確認を完了することができた。また、新たに子どもによる自治活動(児童館やサマーキャンプ)や、無神論教育を推進していた諸団体に関する史料を渉猟した。3月には、当初の予定ではマイノリティ教育に関する調査を行う予定であったが、宗務省の資料の中から1960年代に地方都市で行われた教会の活動に関する史料をまとめて発掘したため、調査効率の観点からそちらの確認作業を優先した。 3.については、教科書検定に関する史料など一部の収集に留まった。しかし現地で、本研究課題とは別のスキームでマイノリティ教育に関する研究交流の機会を得ることができたことから、本研究にも活用し得る研究基盤を構築できたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.理論面では、東欧およびローマ・カトリックの特徴を明らかにし、従来の研究の中でのその位置づけを明らかにするための基礎を確立することができた。 2.一次史料については、研究の中核を成すテーマについては順調に収集が進んでいる。社会主義期に醸成されたメンタリティと、カトリック教育との関係性につき、包括的に分析を行う準備が整ったと言える。 3.副次的な研究テーマについては史料収集を先送りしたものの、「2」において予定外に重要な史料を発見したためであることから、研究計画の推進に大きな影響は与えないと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の調査はおおむね順調に進展しているため、研究計画に大きな変更を加える予定はない。 次年度は共同研究など他のスキームで、1.さらに長いスパンでのポーランドの政教関係史を扱う研究課題、2.現代ポーランドの宗教教育に関する研究課題に取り組むことになることから、物理的に本研究に割けるエフォートは下がる可能性があるが、両課題とも本研究課題と関連するテーマであることから、相互に研究成果を参照し、包括的な理解を深めることで、研究の効果的な進展が見込めるものと考えている。
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Causes of Carryover |
2~3月の調査データを保存するため購入を予定していた外付けハードディスクにつき、調査が3月下旬にずれ込んだため、購入(発注)が次年度になった。年度が替わり次第、速やかに購入する。
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