2017 Fiscal Year Research-status Report
北欧北方宗教哲学における葛藤の原理―復讐・無垢・共生の精神史的ダイナミズム―
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17K02229
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
中里 巧 東洋大学, 文学部, 教授 (40277348)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 復讐 / 共生 / 北欧 / 北方 / キリスト教 / 正教 / エンデ / 無垢 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は4年間にわたり、北欧北方宗教哲学思想の根底に在り続けてきた報復主義と共生の矛盾相克を精神史的に解明するものである。個別の事項としは北方地域の神話・民話・法律・土俗宗教・キリスト教・啓蒙理性・商業経済交易などである。平成29年度実施計画は、復讐譚データベース構築の開始・黒姫童話館におけるエンデ私文書の調査・論文作成などである。1.復讐譚データベースについては、平成29年度は端緒についた段階で、平成30年度も引き続きおこなっていく予定である。2.キリスト教正教の膨大な教会伝承から、復讐と共生の矛盾律を解決するヒントとなる諸概念、すなわち、神概念(シュネルギア)・死生観(死者祈祷)・悪の根本的解決(アポカタスタシス)などを発見することができたのは平成29年度における大きな成果である。3.M.エンデについては、黒姫童話館に赴き、私文書書簡を1970~1980年代の精察して「無垢」概念を中心に調査をおこなった。4.雑誌に論文を作成・投稿した。 なお、復讐と共生の矛盾律を解明するキリスト教正教諸概念については、カリストス=ウェアの諸論考、とりわけシリアのイサアクの文献、スコットランド人医師マッカルによる死者祈祷に関する文献が大変役立った。また、北方宗教哲学という概念との関係では、北方地域において広範に正教が定着していること、キルケゴール思想における建徳的講話の再解釈と再評価によって、同様に、復讐と共生の矛盾律を克服する思想を見出す可能性があることを付記する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
復讐と共生についての矛盾律を解決するヒントとなるキリスト教正教の諸概念や資料を発見することができたのは、当初計画していなかったが、平成29年度の大きな成果であった。その反面、復讐譚についてのデータベース化作業については、当初予定していたよりも作業を進めることができなかった。全体としては、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、すでに提出している平成30年度の研究実施計画どおりに作業をおこなっていくが、作業が遅れている復讐譚データベース化作業についても、併せて平成30年度におこなっていくつもりである。
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Research Products
(7 results)