2020 Fiscal Year Research-status Report
南島キリスト教伝道圏の形成と福音的信仰の浸潤についての交流史的研究
Project/Area Number |
17K02232
|
Research Institution | Teikyo University of Science & Technology |
Principal Investigator |
一色 哲 帝京科学大学, 医療科学部, 教授 (70299056)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 仲里朝章資料 / 松岡政保 / 沖縄諮詢会 / 沖縄民政府 / キリスト教交流史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、新型コロナ・ウィルス感染症の蔓延のため、現地での調査に制限がかかり、新たな発見をすることは難しい情勢にあった。そのため、これまで収拾した資料の整理と、研究成果のまとめを主として行った。また、これまで執筆した学術論文等の成果について単行本として出版するために原稿の整理と、加筆・修正を行った。この成果については、沖縄戦の終盤から米軍占領期、沖縄キリスト教団と日本基督教団の合同と本土復帰・沖縄返還の時期までのキリスト教史について、「キリスト教交流史」の視点から本科研の最終年度である2021年度内にまとめて、出版を目指したいと考えている。 フィールドワークについては、上記のような社会情勢であったが、2020年12月と2021年2・3月に沖縄島でフィールドワークを行った。報告者は、これまで戦後沖縄キリスト教史上のキーパーソンである仲里朝章について、仲里が残した文書(「仲里朝章資料」)の整理やその文書を使って論文を執筆してきた。このたび、2020年度末に、沖縄キリスト教学院と同学院キリスト教平和総合研究所の主導でそれらの仲里朝章資料について整理と公開の準備が一応の完成を迎えた。報告者は、その最終のための打合せを沖縄で行った。また、同学院・研究所の要請でその解題を「仲里朝章史料解題、および、仲里朝章関係史料の紹介」と題して執筆し、同資料の目録に掲載していただいた。 その他、2度目の沖縄フィールドワークの際に、戦後、沖縄諮詢会の幹事・工務部長であった松岡政保の遺族と電話を通してのインタビューを行った。その際に、松岡が戦前期、アメリカでキリスト教の洗礼を受けていたということを本人から聞いているとの証言を得た。このことにより、沖縄占領初期に組織された沖縄人による沖縄諮詢会・沖縄民政府にキリスト教会関係者が多数関与し、政策を実行していたという報告者の仮説を裏づけるものになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、新型コロナ・ウィルス感染症の流行で勤務先である東京都からの出境と沖縄県への入境が制限されていたため、じゅうぶんにフィールドワークができず、新しい史料の発見や聞き取り調査の実施が困難であった。そのため、研究深化のための新しい展開は乏しく、その点で研究の進捗状況は思わしくなかった。 一方で、フィールドワーク以外に、これまで収集した史料の整理と、研究成果のまとめ、出版に向けてのこれまでの論考の整理と加筆・修正が行えた。 これらのことを勘案して、本研究は、2020年度初めの計画と比較して、「やや遅れている」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は2021年度で最終年度を迎える。そのため、これまでの成果の公表を具体化したい。また、本研究で懸案となっている南島地域(沖縄・宮古・八重山・奄美の各群島)のキリスト教伝道の現況について悉皆調査を行う。これについては、郵送等の方法でアンケートをまず行い、問題点を分析し、必要であれば、現地調査を行うものとする。 以上のように、本研究のまとめを行う課程で、新たな研究課題を見つけ、次の科研研究への展開を図りたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
新型コロナ・ウィルス感染症の流行・蔓延で、フィールドワークが制限されており、新たに資料収集が行えなかった。そのため、収集史料の整理のための人件費・謝金や物品費、その他の出費の必要がなく、次年度の使用額が生じた。
|