2021 Fiscal Year Annual Research Report
Cross-regional Historical Study of the Formation of the Nanto Christian Mission and the Infiltration of evangelical Beliefs
Project/Area Number |
17K02232
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Research Institution | Teikyo University of Science & Technology |
Principal Investigator |
一色 哲 帝京科学大学, 医療科学部, 教授 (70299056)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 福音的信仰の浸潤 / 自立と依存 / キリスト教伝道圏 / キリスト教交流史 / 軍事占領と信仰 / 宗教と宣撫工作 / クリスチャンによる反戦運動 / 琉球併合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究期間の最終年度で、これまでの成果の公刊準備として、沖縄県立図書館や沖縄県公文書館、沖縄キリスト教学院大学等に出張した。出張の目的は、研究の打合せ・報告と、これまでに収集した史料やデータの確認である。 これらの調査を通じて得た新しい知見は以下の通りである。近代以降、「琉球併合」による帝国日本への強制的併合から、第二次世界大戦・沖縄戦をはさんで、米軍統治下時代と南西諸島をめぐる政治や軍事、経済、移民・植民等の労働力移動の状況が幾度かの転換点で変更されてきたが、そのたびに南島地域のキリスト教をとりまく状況も変化してきた。したがって、それぞれの時代で、南島地域への福音主義信仰の浸潤の広がりや形態は違ってきている。 プロテスタントやカトリックによる南島伝道・宣教が再開された19世紀末、南島へは日本本土から日本人伝道者や宣教師が来島した。こうして、プロテスタント各教派による南島伝道圏が形成された。そして、その伝道圏をめぐって、本土から台湾にかけて「貫流」と帝国日本の植民地・勢力圏を巡回する「還流」、南島から海外・海外から南島へと続く「越流」として類型化されるキリスト者の交流が続いた。その信仰の交流が南島の人々がおかれた歴史的体験と共鳴し、交流のたびに南島伝道圏の信仰は活性化された。その結果、南島では独特の福音的信仰が生まれ、それが浸潤していった。 しかし、その流れは、1930年代後半からの南島地域の軍事化と沖縄戦によって、一旦、断絶する。そして、1945年4月頃から民間人捕虜収容所ではじまった戦後の南島のキリスト者の歩みは、占領軍に対する距離感によって《自立》と《依存》の輻輳した方向に進むことになる。《自立》への歩みは本土教団との「合同」に向けて動きだすが、その一方で、軍事占領から派生する多くの社会問題に取り組むなかで、南島におけるキリスト教の存在が広く浸潤していった.
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