2017 Fiscal Year Research-status Report
科学技術時代における宗教倫理の展開─「不在者の倫理」の構築
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17K02235
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
小原 克博 同志社大学, 神学部, 教授 (70288596)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 科学技術 / 宗教倫理 / 食 / 犠牲 / 記憶 / 世代間倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、科学技術が人間の欲望を先導する時代において、宗教倫理の視点から、現代世代の倫理的責任を明確化し、世代を超えた新たな公共性の認識を拓くことを目的としている。「現在の存在者」の利益を最大化するために用いられる科学技術を、ただ現代世代の利害関係、現代世代の公共性の内部において批判するだけでは十分ではない。宗教学や宗教倫理においてなし得る固有の働きは「過去の不在者」にかかわる豊穣なリソースを活用し、同時に「未来の不在者」に対する想像力を活性化することを通じて、過去と未来に対する倫理的射程を拡大し、それによって現代世代に課せられた責任を喚起することである。このような課題を担う「不在者の倫理」構築するために、2017年度は、その構成要素の中から、特に「食の倫理」と「犠牲の倫理」における課題を整理した。 食の倫理は、人間の身体性に光を当てる。西洋思想において、人間の尊厳はもっぱら魂の中に見出され、肉体の中に見出されることはなかった。キリスト教の伝統においては、肉体が蔑視されることも少なくなかった。しかし、本研究にとって重要な「世代間倫理」を具体的なものとして構築するためには、時間的および空間的な次元における間身体性(時間的・空間的ギャップを架橋する身体的つながり)が重要であり、その間身体性の土台となるのは、すべての命を支える「大地性」であることを認識するに至った。 他方、人間社会にはその原初的な段階から、社会構造を維持するために身体を犠牲として捧げることを求めてきた。近代国家は伝統的な「犠牲」の観念を迷信として破棄したのではなく「犠牲のシステム」としてアップグレードさせ、それは科学技術によって補完されている。科学技術によって促進される人間の消費欲求は他者の犠牲を容易に正当化し、それは未来世代の犠牲にまで及ぶことを、倫理的課題として明確化する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の基盤となる論点を整理し、その成果を学会等で発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画において掲げたキーコンセプトを、さらに掘り下げ、学会等を通じて、思索の途中経過を積極的に発表していく。また、まとまった成果は、論文や単行本の執筆につなげていく。
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Causes of Carryover |
本研究以外の科研費、および科研費以外の外部資金により、カバーできた費目が多かったため、本研究の当該年度使用において残高が生じることになった。次年度においては、差額分を十分に意識して、研究費の適正な執行に努める。
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Research Products
(11 results)