2018 Fiscal Year Research-status Report
科学技術時代における宗教倫理の展開─「不在者の倫理」の構築
Project/Area Number |
17K02235
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
小原 克博 同志社大学, 神学部, 教授 (70288596)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 科学技術 / 宗教倫理 / 食 / 犠牲 / 記憶 / 世代間倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、科学技術が人間の欲望を先導する時代において、宗教倫理の視点から、現代世代の倫理的責任を明確化し、世代を超えた新たな公共性の認識を拓くことを目的としている。このような課題を担う「不在者の倫理」構築するために、2018年度は、その構成要素の中から、特にエネルギー問題、人工物と人間の関係を整理した。 エネルギー問題は、現在世代の消費行動や政策決定が未来世代や未来の地球環境に決定的な影響を与えることを示しているが、現実には、未来世代の資産を現在世代が先食いしているかのような状況がある。こうした問題を考え、現代世代中心主義を抑制するためには、より広い歴史感覚に支えられたコミュニティ意識(世代間コミュニティ)が必要となる。そのために、今ある存在が「不在のもの」によって構成されていることを科学の視点からも認識し、「過去の不在者」との相互関係を「未来の不在者」への責任へと転換する「不在者の倫理」を、科学と宗教を架橋する倫理として構築していかなければならない。 今後、人工知能やロボットなどの人工物が、人間の経済活動やエネルギー消費を最適化することが予想されるが、他方、人間の価値判断がスマホ、人工知能等の人工物から多大な影響を受けていることも認識しなければならない。その意味では、人間と人工物(技術)の根源的な相互浸透性を視野に入れることのできる価値規範が求められる。人工知能のような人工物は「不在者」の世界から「存在者」の世界へと越境してくる可能性を持つ。しかし、「不在者」の「存在者」の世界への越境行為は決して新しいことではなく、むしろ、両者のコミュニケーション作法に関して、我々は膨大な宗教的・文化的蓄積を有している。そうした知見を生かして、近未来社会にふさわしい、人間と人工物を架橋する倫理的規範を考えていく必要があるだろう。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の基盤となる論点を整理し、その成果を学会等で発表することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究計画において掲げたキーコンセプトを、さらに掘り下げ、学会等を通じて、思索の途中経過を積極的に発表していく。また、まとまった成果は、論文や単行本の執筆につなげていく。
|
Causes of Carryover |
本研究以外の科研費、および科研費以外の外部資金により、カバーできた費目が多かったため、本研究の当該年度使用において残高が生じることになった。次年度においては、差額分を十分に意識して、研究費の適正な執行に努める。
|
Research Products
(12 results)