2020 Fiscal Year Research-status Report
科学技術時代における宗教倫理の展開─「不在者の倫理」の構築
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17K02235
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
小原 克博 同志社大学, 神学部, 教授 (70288596)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 科学技術 / 宗教倫理 / 食 / 犠牲 / 記憶 / 世代間倫理 / 人工知能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、科学技術が人間の欲望を先導する時代において、宗教倫理の視点から、現代世代の倫理的責任を明確化し、世代を超えた新たな公共性の認識を拓くことを目的としている。「現在の存在者」の利益を最大化するために用いられる科学技術を、ただ現代世代の利害関係、現代世代の公共性の内部において批判するだけでは十分ではない。宗教学や宗教倫理においてなし得る固有の働きは「過去の不在者」にかかわる豊穣なリソースを活用し、同時に「未来の不在者」に対する想像力を活性化することを通じて、過去と未来に対する倫理的射程を拡大し、それによって現代世代に課せられた責任を喚起することである。 このような課題を担う「不在者の倫理」構築するために、2020年度は、その構成要素の中から、「食の倫理」における課題を整理した。新型コロナウイルスの感染拡大の中で、もっとも影響を受けている領域の一つが食にかかわる行為やビジネスであるが、食は我々の身体性・動物性・大地性に深く関わると同時に、それら異なる次元をつなぎとめる営みであることを、神学的・宗教学的な視点から明らかにした。 また、科学技術がもたらす現代的特徴を俯瞰するために、「自然─人間─人工物」という伝統的な区分が曖昧化しつつあることに着眼し、昨年度に続き、人工知能をめぐる倫理的課題を考察した。AIと宗教研究の接点を考察すると共に、AIによる最適化技術が人間観をどのように変化させるのか、それに対し、宗教研究はどのような批判的視座を提起できるのかを明らかにした。 さらに、「不在者の倫理」を構築するための思想的手がかりとして「良心」概念に着目した。西洋語の「良心」(conscience)は「共に知る」という原義を持っているが、その伝統的な議論に加え、未来世代と「共に知る」ことの倫理的重要性を論じ、「良心」の概念拡張が「不在者の倫理」に貢献することを提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の基盤となる論点を整理し、その成果を学会等で発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画において掲げたキーコンセプトを、さらに掘り下げ、学会等を通じて、思索の途中経過を積極的に発表していく。また、まとまった成果は、論文や単行本の執筆につなげていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大に伴い、予定していた海外出張を実施できなくなったため、本研究の当該年度使用において残高が生じることになった。次年度においては、差額分を十分に意識して、研究費の適正な執行に努める。海外出張がどの程度自由にできるかは不透明な部分があるが、適切なタイミングによる出張計画を立て、また、最終年度における研究の総括となるよう積極的な成果発表を心がける。
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Research Products
(15 results)