2021 Fiscal Year Research-status Report
科学技術時代における宗教倫理の展開─「不在者の倫理」の構築
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17K02235
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
小原 克博 同志社大学, 神学部, 教授 (70288596)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 科学技術 / 宗教倫理 / 世代間倫理 / 人工知能 / 新型コロナウイルス / 気候変動 / 良心 / 未来世代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、科学技術が人間の欲望を先導する時代において、宗教倫理の視点から、現代世代の倫理的責任を明確化し、世代を超えた新たな公共性の認識を拓くことを目的としている。「現在の存在者」の利益を最大化するために用いられる科学技術を、ただ現代世代の利害関係、現代世代の公共性の内部において批判するだけでは十分ではない。宗教学や宗教倫理においてなし得る固有の働きは「過去の不在者」にかかわる豊穣なリソースを活用し、同時に「未来の不在者」に対する想像力を活性化することを通じて、過去と未来に対する倫理的射程を拡大し、それによって現代世代に課せられた責任を喚起することである。 このような「不在者の倫理」を構築するために、2021年度は、人間と地球環境(生態系)の間の均衡が急速に失われた結果、新型コロナウイルスや気候変動が生じ、そこには今後の人類が向き合っていかなければならない共通の課題が潜んでいることを考察した。現在世代の欲望の肥大化によって生じた結果(環境負荷)は未来世代にまで悪影響を及ぼすが、その構造を分析・制御するためには、技術発展だけでなく、人間の消費行動を適切に制御できる倫理が必要となる。 こうした課題に応えることのできる新しい倫理は、自然と人間の関係だけでなく、人工物との関係も包括するものでなければならない。AIによる最適化技術は、人間の欲望を増幅させる側面を持つだけに、その作用を批判的に対象化できる倫理が必要となるが、「不在者の倫理」はその一助となり得る。 2020年度に続き21年度も「不在者の倫理」を構築するための思想的手がかりとして「良心」概念(conscienceの原義は「共に知る」)に着目し、概念拡張することを試みた。すなわち、未来世代と「共に知る」、大地と「共に知る」、人工物と「共に知る」ことによって、過剰な人間中心主義や現在世代中心主義を克服する可能性を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の基盤となる論点を整理し、その成果を学会等で発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画において掲げたキーコンセプトを、さらに掘り下げ、学会等を通じて、思索の途中経過を積極的に発表していく。また、まとまった成果は、論文や単行本の執筆につなげていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大に伴い、予定していた海外出張を実施できなくなったため、本研究の当該年度使用において残高が生じることになった。次年度においては、差額分を十分に意識して、研究費の適正な執行に努める。海外出張がどの程度自由にできるかは不透明な部分があるが、適切なタイミングによる出張計画を立て、また、最終年度における研究の総括となるよう積極的な成果発表を心がける。
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Research Products
(10 results)