2022 Fiscal Year Annual Research Report
The Development of Religious Ethics in the Age of Science and Technology: The Construction of "Ethics of the Absent"
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17K02235
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
小原 克博 同志社大学, 神学部, 教授 (70288596)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 科学技術 / 宗教倫理 / 世代間倫理 / 人工知能 / 新型コロナウイルス / 気候変動 / 良心 / 未来世代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、科学技術が人間の欲望を先導する時代において、宗教倫理の視点から、現代世代の倫理的責任を明確化し、世代を超えた新たな公共性の認識を拓くことを目的としている。「現在の存在者」の利益を最大化するために用いられる科学技術を、ただ現代世代の利害関係、現代世代の公共性の内部において批判するだけでは十分ではない。宗教学や宗教倫理においてなし得る固有の働きは「過去の不在者」にかかわる豊穣なリソースを活用し、同時に「未来の不在者」に対する想像力を活性化することを通じて、過去と未来に対する倫理的射程を拡大し、それによって現代世代に課せられた責任を喚起することである。 このような「不在者の倫理」を構築するために、2022年度は、21年度に続き、人間と地球環境(生態系)の間の均衡が急速に失われた結果、新型コロナウイルスや気候変動が生じ、そこには今後の人類が向き合っていかなければならない共通の課題が潜んでいることを考察した。人間を含む、地球上の生命を全体としてとらえていくためには、生命進化を無視することはできない。それによって生命の多様性の認識と人間中心主義の相対化が可能になるからである。 2022年度は、安倍元首相の銃撃事件以降、宗教の公共圏における位置づけが厳しく問われることになった。その関係で、「宗教2世」問題もクローズアップされることになったが、「宗教2世」と呼ばれる人たちは、現在の社会から「不在」とも言えるほどに、公的な視点からは見えない存在であったことが明らかになってきた。こうしたアクチュアルな課題に関連し、特定の人々を「不在」としないためにも「不在者の倫理」は有効である。そのことを近未来の政教関係の中で問う必要があることや宗教リテラシーの必要性について本年度は考察した。
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