2020 Fiscal Year Research-status Report
日本におけるクィア神学の文脈化をめぐる研究――「解放の神学」アプローチの可能性
Project/Area Number |
17K02245
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Research Institution | Kyoto Human Rights Research Institute |
Principal Investigator |
堀江 有里 公益財団法人世界人権問題研究センター, その他部局等, 専任研究員 (60535756)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | クィア神学 / ジェンダー / セクシュアリティ / フェミニズム / 天皇制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、キリスト教における性規範を問う「クィア神学」を日本の文脈のなかで読み直すことを目的とする。4年目の本年度は最終段階での参与観察やインタビュー調査を実施し、とりまとめをおこなう予定であったが、コロナ禍により、予定していた調査地に訪問することができなかった。そのため、文献調査やこれまでのネットワークのなかでの意見交換や資料・情報収集などの方法を採用することとなった。首都圏における天皇制にかかわる市民団体での資料収集をおこなったほか、2021年度より拠点が近畿圏内に動いたため、さまざまな制約がありつつも、社会運動やキリスト教関係のネットワークをつなげることができた。とくに1960年代終盤以降、大阪万博問題をきっかけのひとつとして「国家と教会」の関係性を問う営為が近畿圏で繰り広げられてきたが、その歴史資料および担い手との意見交換を継続できたことは次年度の研究活動に向けての大きな収穫である。 また、コロナ禍におけるキリスト教の各個教会の活動について、日本基督教団京都教区(京都府・滋賀県の地域共同体)の教会を訪問し、情報収集と協議をおこなうことができた。一般社会では、家族のなかでの女性たちの役割負担の増大や、非正規雇用の女性たちの生活困難が取り沙汰されたが、宗教集団も社会における人間関係のひとつの縮図であることがコロナ禍で露呈されたと言える。また、規模や置かれている地域により、教会間の格差がさまざまに生じていることも明らかとなった。 ほかの研究プロジェクトとの連携や情報交換を昨年度より広がりをもち、深化させることができたのも今年度の成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍により、参与観察やインタビュー調査の計画に大きな支障は出たものの、調査対象地域の広がりも含め、あらたな可能性を広げることができた。 そのため、研究活動の計画を修正しつつ、進めることが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、これまでに収集した資料の分析と公刊に向けて、課題を整理したうえで、2020年度に不可能であったので、可能であれば、幼児教育や地域活動のなかでジェンダー・セクシュアリティにかかわる実践をおこなっている機関に赴き、調査をおこないたい。 また、2020年度の研究活動のなかで見出されたのは、教会の状況を把握し、情報交換をおこなっていくことでもある。論文やリーフレットなどの発行による社会還元という当初の目的以外に、疲弊している教会間のネットワークに資する資材の提供も試みたい。
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Causes of Carryover |
本年度も調査で収集したデータの分析、また、当初予定していた国内および海外調査を行なうことができなかった。そのため、次年度使用額が生じることとなった。 繰り越した研究費は、最終年度にデータ分析のための機材の購入、国内外調査の旅費、謝金、成果刊行物の印刷費等に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)