2017 Fiscal Year Research-status Report
モダニティとニュートン主義―複数世界・知の科学化・ソーシャリティ・文明の再構築
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17K02252
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長尾 伸一 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (30207980)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 近代思想史 / 啓蒙 / 科学史 / 文明批判 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は近代ヨーロッパ思想におけるニュートン主義の役割を、複数世界のヴィジョンと知の科学化にあると見て、それに基づき18世紀啓蒙思想を、人間存在に根源的な、社会的動物(zoon politikon)および知的生命(intelligent being)という二重のソーシャリティ(社会性)の理解を基とする、日常世界の視点からの文明の再構築(great instauration―フランシス・ベーコン)の企てと捉え直すことを目的としている。 本年度では研究計画のうち、以下の2点の解明を行った。(1)二重のソーシャリティ:社会的動物と知的生命(2)知の科学化による「現実」の生成 その結果、以下の点が明らかになった。啓蒙は社会的存在としての人間を、科学を範型に(1)二重のソーシャリティ(社会的動物と知的生命)から理解した。それは「社会的動物」としての経験的存在の面に加え、論理と数理という、神を含む全ての知性に普遍的に妥当する手段で、複数世界に多数存在する純粋な知的生命の一つとして人間を見ることであり、それが通常利己心と道徳法則の対立と叙述される、この時代の「人間本性論」の豊かな展開をもたらした。しかし人間存在に本源的な二つのソーシャリティからは、文明とその権力機構は導かれない。むしろその観念は、(2)知の科学化による、公的言説空間における「現実」の生成と結びついて、知的生命としての普遍的なあり方(自然的秩序)を内包する日常経験の世界(生活世界)と、王や神や想像上の富である貨幣が支える文明(システム)との対立の視点をもたらした。 これらの成果は、科学と啓蒙の展開の関連を明確にすることによって、近代思想史像に新しい視点を与えると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究と並行して行った経済学の生誕にかかわる著書の編集、執筆によって、科学史と社会科学の成立の関連がより明確になった。
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Strategy for Future Research Activity |
順調に進行しているため、とくに大きな変更はなく、より内容を豊富に発展させることに留意して遂行する。
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Causes of Carryover |
大学の運営業務のため、海外出張の回数が減少したため、次年度に遂行することとした
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