2019 Fiscal Year Research-status Report
モダニティとニュートン主義―複数世界・知の科学化・ソーシャリティ・文明の再構築
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17K02252
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長尾 伸一 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (30207980)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 啓蒙 / 近代思想 / 科学史 / ニュートン / 社会科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では主に、(1)「精神の研究」と道徳的行為(2)文明における「ゴースト」の機能の2点を解明した。 (1)については、リードとカントの複数世界論、知的生命論と道徳的行為論の比較研究を通じて、啓蒙における知的生命のソーシャリティ概念の包括的理解をはかった。そのためにリードの3主著の詳細な分析、『純粋理性批判』の各版比較および『実践理性批判』とリードの『人間の能動的力能』との比較検討、および20世紀のK.J.アローに至る経済学の行為理論の総括を行った。(2)の課題については、ヘーゲルのニュートン批判、精神哲学の検討およびそれらのヘーゲル左派への継承と、アドルノやフーコー、ハーバーマスなど現代思想への展開を概観することによって啓蒙批判の諸論点を整理し、その錯誤が日常世界を超えた巨大な文明の「システム」のメカニズムと、それを成り立たせる、経験と論理を超えた空想上の「主体」を捉えられなかった点にあったことを解明した。またそれと同時に啓蒙は、宇宙論的普遍性の下で人間を考察したため、宇宙の時代における人間と知性の定義、定常社会論などの現代的課題への視野をも持つことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
個人研究の点では遅滞なく進行し、当初の研究計画に沿った十分な成果が得られているが、全体総括のために最終年度に計画していた海外資料調査および海外の研究者との意見交換等が新型肺炎のために不可能となり、予定した期間内で研究を終了できなくなったため、研究期間を一年間延長した。
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Strategy for Future Research Activity |
前期の問題に対応するため、研究期間を一年間延長し、主に文献調査と電子データベースを使用した国内での調査研究のみに限定した研究を遂行して、研究の全体総括を行うこととした。外的要因による研究の延長だが、一年の研究期間延長に見合った形で、当初計画から内容をより豊かにするように、経済学史を中心とした近代西欧社会科学史や環境思想史の追加的研究を含める形で、再度企画を練り直した。なお延長期間中に可能になれば、海外資料調査及び海外研究者との意見交換を積極的に行うが、現時点ではその可能性が明らかでないため、基本的に国内での個人研究で研究を終了できるように計画する。
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Causes of Carryover |
海外資料調査および海外研究者との意見交換という、海外渡航を必須とする最終年度の企画の一部が新型肺炎によって実行できなくなったため、研究期間を一年延長することとした。渡航が可能になれば予定通り遂行するが、可能性が明らかでないため、主に国内での個人研究によって予定した成果が得られるように企画を変更する。
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