2020 Fiscal Year Annual Research Report
modernity and Newtonianism
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17K02252
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長尾 伸一 名古屋大学, 経済学研究科, 名誉教授 (30207980)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 啓蒙 / ニュートン主義 / 思想史 / 科学史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではニュートン主義が固有の自然科学の領域を超えて、18世紀の知的世界を形作る一つの力として機能したことを、以下の諸点にわたって解明した。
前世紀の形而上学的思索を受け、啓蒙は社会的存在としての人間を、科学を範型に(1)二重のソーシャリティ(社会的動物と知的生命)から理解した。それは「社会的動物」としての経験的存在の面に加え、論理と数理という、神を含む全ての知性に普遍的に妥当する手段で、複数世界に多数存在する純粋な知的生命の一つとして人間を見ることであり、それが通常利己心と道徳法則の対立として叙述される、この時代の「人間本性論」の豊かな展開をもたらした。しかし人間存在に本源的な二つのソーシャリティからは、文明とその権力機構は導かれない。むしろその観念は、(2)知の科学化による、公的言説空間における「現実」の生成と結びついて、知的生命としての普遍的なあり方(自然的秩序)を内包する日常経験の世界(生活世界)と、王や神や想像上の富である貨幣が支える文明(システム)との対立の視点をもたらし、啓蒙に(3)日常世界の視線に基づく文明批判による、文明の再構築を企てさせた(啓蒙の未完のプロジェクト)。それは学問的には、(4)社会体の自然的秩序の観念の確立による社会科学の形成を促し、また(4)「精神の研究」と道徳的行為の原理の哲学的定式化による、時間的、空間的に普遍的な知的生命の理解を生み、現代世界を支配する人間主義と自由主義的社会理論に土台を提供した。しかしそれらは生物学におけるセントラル・ドグマの確立以前に試みられた人間の科学であるため、地上の社会の十分な説明原理を持たない普遍主義に終わり、それらを批判したヘーゲル派が(6)文明におけるSujet=経験と論理を超えたゴーストの機能を指摘し、現代思想に道を開くこととなった。
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