2017 Fiscal Year Research-status Report
現代フランス哲学の宗教的背景の解明に向けて:カヴァイエスの数理哲学と宗教思想
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17K02253
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
中村 大介 豊橋技術科学大学, 工学部, 准教授 (70726611)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | カヴァイエス / プロテスタンティズム / 数理哲学 / エピステモロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は高等師範学校時代におけるカヴァイエスの宗教思想を中心に研究をおこなった。特に、大戦間期ドイツにおける青年運動を対象としたカヴァイエスの論考に読解を加えた(この点で、「研究実施計画」記載の研究順序から変更を加えている)。 まず両大戦間におけるドイツのプロテスタンティスムについて深井智朗氏の著作などから学び、その上でカヴァイエスの論考を読解した。とりわけ論文「ドイツにおける青年運動」(1932年)については訳稿を作成した。こうした作業で明らかになったのは、カヴァイエスのドイツ青年運動に対する評価に、ニーチェあるいは後年のカンギレムに通底するような「今現在において価値評価していく」態度が明瞭に含まれている点である。なお、こうした作業と並行して、カヴァイエスの手紙の文字起こしの作業も開始している。 3月には連携協力者の原田雅樹氏と前記の訳稿を元に会合を開き、(1)カヴァイエスが青年運動の歴史を追求する際に探究する「内在的な理由」の「内在性」を明らかにする必要があること、及び(2)神秘思想がカヴァイエスに与えた影響とヘーゲルに与えた影響とを比較する必要があること、以上二点を中心に様々な指針を受け取ることができた。 またカヴァイエスの数理哲学については、9月に開かれた日仏哲学会提案型ワークショップ〈金森修の科学思想史とエピステモロジーのこれから〉において、「〈抵抗するエピステモロジー〉の系譜:バシュラール、カヴァイエス、カンギレム」と題した発表をおこなった(近藤和敬・鹿児島大学准教授との共催)。そこでは、カヴァイエスの数理哲学と彼のレジスタンス活動が一種の相同性をもっていることを指摘すると共に、バシュラールやカンギレムの哲学と収斂するような「抵抗」に関する着想を描き出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究テーマA「高等師範学校時代のカヴァイエスの宗教活動」と研究テーマB「ドイツにおける青年運動及び神学に関する彼の見解」の順序を逆転し、後者の研究を2017年度はおこなったが、カヴァイエスの青年運動に関する一連の論文を読み解く大きな視点 ー すなわちニーチェ=カンギレム的な視座 ー を見出すことができた。 とはいえ、2017年度はこの視座からの論文を執筆するには至らなかったため、進捗状況については〈進展はおおむね順調である〉という評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
先述したカヴァイエスの論文「ドイツにおける青年運動」の訳稿に解題を付して、2018年度に紀要掲載する予定である。また可能であれば、研究テーマBに関する発表ないし論文執筆も行うことにしたい。 研究テーマA「高等師範学校時代のカヴァイエスの宗教活動」に移行し、とりわけ、聖十字架のヨハネからカヴァイエスが受けた影響を考察する。
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Causes of Carryover |
消耗品の出費をおさえることができたため。主に書籍の購入にあてることにしたい。
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Research Products
(1 results)