2021 Fiscal Year Research-status Report
プネウマからガイストへ──古代ギリシアからゲーテにいたる人間三元論の系譜
Project/Area Number |
17K02255
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
茶谷 直人 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (00379330)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久山 雄甫 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (70723378)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プネウマ / ガイスト / ゲーテ / アリストテレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、<魂><精神><身体>からなる「人間三元論」の系譜について、「プネウマ」から「ガイスト」にいたる概念の連なりに着目しつつ多角的に考察するものである。 当年度は、茶谷と久山のそれぞれが発展させてきたギリシア哲学研究(プネウマ・プシュケー研究)とドイツ文学・思想研究(ガイス ト・ゼーレ研究) を発展的に継続させつつ、相互的な討議を行うことで、ひとまとまりの系譜論の構築をめざす作業を昨年度に引き続き遂行した。 一連の作業を通じての本科研最重要の実績は、2021年12月12日に阪神ドイツ文学会シンポジウムとして「プネウマ、スピリトゥス、ガイスト――概念史点描の試み」をオンライン開催したことである(本科研が共催)。本シンポジウムでは茶谷がアリストテレス、久山がゲーテについて発表したほか、河合成雄氏(神戸大学教授)がフィチーノ、蘆田祐子氏(神戸大学博士課程後期課程)がシュティフターについてそれぞれ論じ、プネウマからスピリトゥスをへてガイストにいたる概念史を素描した。本科研が計画していたヨーロッパ思想史再検討の一端がこれによって実現したと言える。この実績は、本科研の最終的な目的である、プネウマとガイストをめぐる論文集刊行に向けてた蓄積作業を大きな柱の一つとなるものである。 その他久山は、昨年度より延期されていた国際独文学会での口頭発表(ゲーテの『メルヒェン』論)をオンラインで行った。これは高い評価をえて国際論文集掲載の依頼があったため、発表内容を論文化して提出した(未刊)。また産総研でゲーテと化学についての招待講演を行い、一般雑誌『未来哲学』にゲーテ・ホムンクルス論を寄稿するなど、国内でも研究成果をひろく学際的ないしは社会的に提示し検討する機会に恵まれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
茶谷、久山のそれぞれが固有研究を発展的に継続させる計画は、研究成果の公表を含め、おおむね順調に進展したと判断することができる。 また、かねてからの懸案であった、プネウマ・ガイストをめぐるシンポジウムの開催も実施し、討議により多くの参加者から有益な知見と示唆を得ることができた。ただし、今般のCOVID-19の引き続きの蔓延により、当初予定していた国内の一線の研究者を交えての当該テーマに関わる研究会の実施など、開催がまだ叶っていない企画も存在する。そのため、昨年度の時点では本年度が最終年度であった研究期間をもう一年延長することを申請し、既に承認されている。
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Strategy for Future Research Activity |
本科研全体では、これまで行った複数回のワークショップやシンポジウムの成果を集積して、プネウマとガイストをめぐる系譜研究的な論文集の刊行を準備する。これは、「人間三元論」を基軸に「プネウマ、スピリトゥス、ガイスト」の概念史を扱う邦語文献として、類例のない成果となると思われる。茶谷はこれと並行して、ソクラテス・プラトンのプシューケー論と国家論との関係について考察を行う予定である。また久山は、在外研究の中止などに伴う国際共同研究の未達が一部にあるが、「ゲーテにおけるガイスト概念」研究の総まとめに入る。邦語での研究書公刊を予定している(出版社ともコンタクト済み)。
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Causes of Carryover |
今般のCOVID-19の蔓延が影響して、研究期間中に予定していたもののいまだ実現できていない研究集会がいくつか存在する。よって研究期間の一年間の再延長と一部経費の繰越を行うにいたった。当計費を本年度執行する予定である。
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