2017 Fiscal Year Research-status Report
Puritan Theories of Toleration: Their History and Modern Appication
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17K02263
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
森本 あんり 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (10317349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩井 淳 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (70201944)
竹澤 祐丈 京都大学, 経済学研究科, 准教授 (60362571)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | モロッコ / アル・アハワーン大学 / カラウィーン・モスク / メクネス / 迫害 |
Outline of Annual Research Achievements |
ピューリタニズムとイスラームの寛容を歴史と現代において理解するには、国内での研究や討論とともに、イスラーム社会における寛容の実態を理解するための海外視察が不可欠である。計画では2年目に行う予定であったこの視察を、前倒しで初年度に実施することになった。これは、「グローバルリベラルアーツ連盟」(GLAA) の大学間連携会議がアル・アハワーン大学(モロッコ)で開催されることになり、当初から出張目的地の一つに含まれていた同大学を訪問する機会としてこれを利用することとしたためである。 同大学は、イスラム教をベースにしたリベラルアーツ大学であるが、学内には学生の多様な宗教的背景に配慮して、キリスト教徒向けのチャプレンが雇用されており、学期中はキリスト教の集会も定期的にもたれている。こうした実態を伝統的なイスラム寛容論と重ね合わせて考察することができ、非常に有意義であった。 また、同大学学長の好意により、隣接都市にある世界最古の大学カラウィーン・モスクを訪ねることができた。同モスクには異教徒は本来足を踏み入れることはできないが、モロッコのイスラム聖省の正式な許可を得た上で入堂し、その最高位にあるイマームの解説を聞くことができた。世界遺産となっているこの中世都市の寛容の形態を歴史的な背景から概観する貴重な機会であった。 同地ではローマ時代から宗教の交代と混淆が繰り返されてきたため、その軌跡を別の周辺都市でも調べることができた。町には、17世紀に4万人のキリスト教徒を奴隷として幽閉したと言われる地下牢があるが、今日その残酷さや不寛容の言説はイスラム側でむしろ強調されている。その評価や意義づけについて、考えをまとめてゆく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目に行われるべき海外視察を初年度に前倒しして行ったため、当初の計画より実際には早く進んでいると言うこともできるが、その成果を咀嚼し文章化するためにはなおしばらくの時間と努力が必要であるため、予定を大きく超えて前進したとまで言うことはできない。 研究分担者との共同作業は、まだ緒に就いたばかりである。各研究分担者は、まずみずからの実施計画に則って研究と考察を深め、そののちにはじめてその成果をもちよって討議をすることになる。そのため、本課題の全体を通してみれば、研究計画が予定より著しく早く進捗していると言うことはできない。 海外視察は本研究の大きな課題の一つであったので、これを初年度に終了させたことは、不確定要素を減じるという点では大きな意味がある。以上、総じておおむね順調に進展していると言うことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、かねて計画してきたピューリタニズム学会研究大会シンポジウムを6月に国際基督教大学で行う予定である。その主題は「寛容論をめぐるピューリタニズムとイスラームとの対話――歴史と現代」となっており、塩尻和子氏が「公共宗教としてみたイスラームの世俗性と普遍性――相互扶助の原理と寛容論」という題で講演、袴田康裕氏が「長老主義教会における寛容論の展開」という題で講演、そして研究代表者が「ピューリタニズムに見る寛容論の内発的変遷と現代イスラーム神学への問いかけ」という題で講演し、意見の交換を行う予定である。研究分担者の岩井淳氏はこのシンポジウムの司会を務めることになっている。 また、10月には同学会の関西支部会が例年のように予定されているが、そこでは主に関西在住の研究者が発表を行う。いま一人の研究分担者である竹澤祐丈氏は、その中心的存在である。 現時点で特に研究計画の大きな変更をする予定はない。
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Causes of Carryover |
第2年度に計画していた海外都市視察を初年度に前倒しして実施するため、配分額についても前倒しに変更したが、渡航先の宿泊事情や交通事情や治安状況などが不明だったので、緊急対応を想定して余裕を持った金額を請求した。 幸い、受け入れ先となった大学などの協力もあり、支出がさほど多くならなかったため、余剰金が生じた。 なお、H30年度の主な支出としては、研究計画に沿って、ピューリタニズム学会の年次大会におけるシンポジウム開催や、関西支部会における研究発表会の運営などに使用する予定である。
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