2018 Fiscal Year Research-status Report
祭神別神社分布図による諸信仰伝播の過程および背景の研究
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17K02270
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
平泉 隆房 金沢工業大学, 基礎教育部, 教授 (20148357)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 祭神別神社分布図 / 日吉信仰 / 日吉大社 / 日吉大社大年表 |
Outline of Annual Research Achievements |
祭神別神社分布図については、すでにいくつかの分布図を作成し、すぐにでも具体的な研究に着手できる状況にある。しかし、神社の祭神の変遷や変更がどのようにして行われ、実際に実施されるのかは、これまでも研究が手薄でほとんど解明されていないように思われる。 申請者(平泉)は、滋賀県大津市鎮座の日吉大社より、編集委員として『日吉大社大年表』の中世部分を改訂増補することを委嘱された。そこで、中世日吉社(現、日吉大社)について総当たりし、それがどのように勢力を拡大していくのか、また中世の各時代に対応しつつどのように変貌していくのかを確認した。従来より、大津神人や日吉神人が商業上の特権などを武器として近江国一帯に進出していくことが知られているが、それを再検証したのである。 また、全国に広がる神明神社(神明社・神明宮などとも)の分布図は以前に作成済みであるが、祭神に注目して天照大神(表現や表記はかなりな種類がある)を奉祀する神社の分布図を作成し、両図を比較したところ、著しい差違のあることに気づいた。つまり、これまで神明神社があまりないとされていた県であっても、実は天照大神を配祀している神社が多く見られ、単純に神明神社の数だけをもって少ないとはいえないことが判明した。明治期になってから、神社名を村落名にしたり、神社合併策による統合で神明神社の名称が消えている場合の多いことが容易に推定できよう。その変遷をたどることは各県の神社明細帳などに丹念に当たらねばならず、論文のかたちで公表するまでにはさらに時間が必要であるものの、複数の県でこのような事実を確認することができた。 このような分布図としては、春日信仰関係、富士浅間信仰関係、大国主命や素戔嗚尊、建御名方尊、天兒屋根尊、菅原道真を祀る神社等、計15種類ほどの神社分布図を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
『日吉大社大年表』編集の課程で、いわゆる山王二十一社といわれているものの祭神が、時代のなかで何回も変更されており、社の名称そのものにも変遷が多々あることを知り得た。そのため、現在の祭神別神社分布図を作成しただけでは極めて不十分であって、祭神の変更の有無をはじめ、慎重に検討する必要があり、そのためには最低限でも各県神社誌等を総当たりする必要がある。 そのようなわけで、相当の時間をそれにあてているため、当初の計画からはやや遅れて進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに、いくつもの祭神別神社分布図を作成しており、個々の考察も進めつつあるが、とりわけこれまでの神社別分布図とは大きく異なる事例を優先的に、今後検討を加えたいと考えている。その信仰が何であるのかについて、現在重点的に検討中である。 最終年度は、これらの成果のなかからとりあえずまとめられそうなもの数信仰くらいに限定して論文として発表したい。
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Causes of Carryover |
学生アルバイトを使っての、資料の打ち込み、祭神別神社分布図の作成には計画的な準備が必要だが、若干の齟齬が生じたため僅かな額が繰り越しとなった。
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