2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02272
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
日暮 雅夫 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (70222239)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 批判的社会理論 / ネオリベラリズム / ホネット / フレイザー / ハーバーマス / 承認 / 市民社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては、(A)ドイツの批判理論、(B)アメリカの批判理論を読解・分析し、(C)それらのネオリベラリズム批判を比較検討して学会で報告した。 5月には共訳書、アクセル・ホネット『私たちのなかの私』 (法政大学出版局、2017年)を出版し、その数章の翻訳と「訳者あとがき」を担当した。この後書きにおいて、A.ホネットの理論展開におけるネオリベラリズム批判の重要性を解明した。ホネットは、近著『自由の理念』において、さらにネオリベラリズム批判を歴史的・コンテクスト的に記述している。 12月には、研究発表「批判的社会理論の対抗戦略」(第20回社会文化学会大会、立教大学)を行った。そこでは、ホネットとN.フレイザーのネオリベラリズムの把握とそれへの対抗戦略を比較した。3月には、上報告を大幅に改稿して論文「批判的社会理論の、新自由主義への対抗戦略」(『立命館産業社会論集』)を発表した。ホネットの批判は、ネオリベラリズムの労働主体の形成における自己責任テーゼ、労働起業家というイデオロギーを問題とする。フレイザーは、現代資本主義とその背景となる諸領域(親密圏、自然、権力)との関連を重視し、この関連を抜きに現代資本主義は解明できないとする。 3月には、市民講座「ホネット『承認をめぐる闘争』を読む」(大阪哲学学校 <知の歴史>入門講座 フランクフルト学派第4回、大阪経済大学)を担当し、ホネットの承認論を展開した。また、研究発表「J.ハーバーマスの市民社会論――東アジア論への展開を補足として」(立命館大学アジア・プロジェクト研究発表会、立命館大学産業社会学部共同研究室)を行い、ハーバーマスの市民社会論の今日的展開可能性を論じた。 その他、事典執筆:「討議と倫理」pp.326-7、日本社会学会理論応用事典刊行委員会編、『社会学理論応用事典』(丸善出版、2017年)を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては、(A)ドイツの批判理論、(B)アメリカの批判理論の読解・分析し、(C)それらのネオリベラリズム批判を総合して学会で報告した。 (A)に関しては、共訳書・ホネット『私たちのなかの私』を出版し、その中のネオリベラリズム批判を分析することができ、「あとがき」に、ホネットの理論体系上の重要性について指摘した。(B)に関しては、フレイザーの『正義の秤』(2008)、「マルクスの隠れ家の背後へ」(2014)を読解・分析した。 上の両者を総合して(C)として、ホネットとフレイザーのネオリベラリズム批判を対比検討し、研究発表「批判的社会理論の対抗戦略」(第20回社会文化学会大会、立教大学)を行うことができた。そこでの討議をさらに整理して、論文「批判的社会理論の、新自由主義への対抗戦略」(『立命館産業社会論集』)に発表することができた。 変更点としては、5月に行われた国際学会「哲学と社会科学」プラハで報告できなかったことであるが、今後に延期した。また、学外研究の滞在先がカリフォルニア大学バークレー校に変更となったので、研究計画に変化が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降においては、(A)ドイツの批判理論、(B)アメリカの批判理論の読解・分析し、(C)それらのネオリベラリズム批判を総合する。具体的な日程としては、8月下旬から年度末まで、カリフォルニア大学バークレー校でマーティン・ジェイ名誉教授のもとで学外研究を行う。 (A)に関しては、引き続き、ホネットの『自由の権利』『社会主義の理念』の翻訳を進め、そのネオリベラリズム批判を分析する。共編著『批判的社会理論の今日的可能性』(晃洋書房、2019年予定)を企画したのでその論文を執筆する。また、田村他編『ハーバーマスを読む』(ナカニシヤ書店)に「ハーバーマスの討議理論」を執筆する。3月下旬に、R.フォアストがドイツ研究振興協会の招きで来日し立命館大学で講演会をすることを希望しているので開催し、討議を行う。 (B)に関しては、引き続きフレイザーの著作を検討する。ジェイの諸著作『弁証法的想像力』『マルクス主義と全体性』、最近の諸論文を検討する。8月下旬からバークレー校の「批判理論プログラム」に参加し、そのワークショップに加わる。ジェイ編のアメリカ批判理論の現状に関する論集を企画し、インタビューを行う。フレイザー、ホネットにニューヨークでインタビューする。 (C)に関しては、上の両者を、ネオリベラリズム批判の観点から総合し、そこから獲得された知見を、批判的社会理論研究会、社会思想史学会等で発表し討議する。ジェイの研究は、批判理論の文化論的パースペクティヴを展開すると位置づける。
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Research Products
(4 results)