2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02276
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
遠藤 徹 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (10313280)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 田安宗武 / 楽曲考 / 復古 / 宗淵 / 羽位論争 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は田安宗武の『楽曲考附録』(国文学研究資料館蔵)の分析を中心に研究を進めた。『楽曲考附録』は宗武の五男の治察の命を受けて侍臣の金田千秋、長野清良、小田隼男、永田磐村が宗武の草稿を集成して浄書したもので、全四十五巻からなる大部のものであるが、その中から本年度は主として宗武の雅楽の楽理に関する考え方が具体的に示されている笙譜(巻十九~巻二十四)と箏譜(巻三十~巻三十二)を取り上げ、これらを詳細に検討することで宗武が当時の雅楽をどのように見ていたか、どのようなかたちの復古を志したかについて考察した。『楽曲考附録』所収の笙譜・箏譜から宗武の思考を辿ると、宗武は所伝の雅楽(唐楽)には原拠となった唐の俗楽二十八調の本来の在り方から逸脱しているところがあり、そのことを問題視したことが確認された。そして、田安宗武の目指した復古のかたちは、所伝の転訛を修正した唐の俗楽二十八調の本来の姿への復古であったと考えた。 その他、僧侶の宗淵が行った楽律学の研究にも着手し、江戸時代後期に宗淵と秀雄との間でなされた天台声明の羽位をめぐる楽理論争の分析を行い、宗淵が当時の楽律学に通じていたこと、北野社の社僧でもあった宗淵は儒学者とは異なり、神楽の音律をも視野に入れていたことなどを明らかにした。 また、6月には米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校で開催された雅楽の国際シンポジウム(オンライン)において基調講演を行い、近世における楽律研究の展開を中村惕斎、雨森芳洲、荻生徂徠、田安宗武、松平定信、平岩元珍等の事績を辿ることを通じて提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症の影響で予定していた資料調査を行えなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
延期していた資料調査を行い、収集した資料の分析を進める。
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Causes of Carryover |
予定していた資料調査が新型コロナウイルス感染症の影響で実施できなかったため。
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Research Products
(2 results)