2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K02278
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
西間木 真 東京藝術大学, 音楽学部, 准教授 (10780380)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 中世音楽理論 / 中世音楽教育 / 音楽についての対話 / 擬オド / アレッツォのグイド |
Outline of Annual Research Achievements |
1000年頃に北イタリア(ミラノ近郊)で執筆された『音楽についての対話』は、中世ヨーロッパの音楽理論および音楽教育実践の歴史に変革をもたらした重要な著作である。それにもかかわらず現代の研究者による批判的校訂版が作成されることがこれまでなく、いまだに18世紀に出版された印刷本の形で一般に知られている。この18世紀のエディションは、ドイツ語圏で作成された写本群に従っており、曲例をはじめ多くのヴァリアントを含んでいる。本研究では、『音楽についての対話』を収めた一次史料の状況を確認した上で、全史料を比較校合し、新しい批判的エディションを校訂することを目的とする。 今年度は、パリのテキスト研究所(IRHT)などで行った調査で所在が確認された63写本のうち53写本について、各地の図書館から取り寄せたマイクロフィルムをもとにテキストの比較校合を行った。またフランス国立図書館(ラテン語3713番、7311番、7369番、7461番)およびトロワ市立メディア館(2142番)においてオリジナル写本の調査を実施し、複写物上で判読が難しいパッセージを確認した。このうちトロワ写本は、モンプリエ写本、ライデン写本、トリアー写本と同じヴァリアントを数多くふくむことが確認された。この4写本では、原文の語順を初学者向けに並べ替えるなどといった教育的な配慮が認められる点で興味深い。 まだ10点の写本の校合が残されているが、それらはいずれも13世紀以降の史料であり、本文の校訂そのものに今後大きな変更が生じることは無いと判断し、本文および註の作成にとりかかった。同時に各行のヴァリアントを検討しながら、写本史料のグループ分けを行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1年間で53写本を確認できた点は、順調といえる。しかし当初予定していたオリジナル史料の現地調査(特にイタリアの図書館)をほとんど実施できなかった。また註および解説に取りかかる準備がようやく整ったところであり、出版を考慮するとやや遅れていると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、校合を行っていない10写本について夏までに校合を行う。また複写物では判読できない写本をリストアップし、順次オリジナル史料の調査を行う。同時にapparat critiqueおよび本文註の作成に取り掛かる。
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