2019 Fiscal Year Annual Research Report
Dialogus de musica (c. 1000) Edition and analyse
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17K02278
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
西間木 真 東京藝術大学, 音楽学部, 准教授 (10780380)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 『音楽についての対話』 / 中世音楽理論 / 音楽写本 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、apparat critiqueの編集を進めながら、これまでに行った写本のヴァリアント校合作業の見直しを行った。その結果、イタリア語圏写本群、ドイツ語圏写本群、フランス語圏写本群とは別に、書き下し文のように平明に単語を並び替えた資料が複数みられることが明らかになった。これらは主に北フランスからオランダにかけての地域で書写された資料であるが、南イタリア起源の写本にみられるヴァリアントを含んでおり、今後、伝播経路について検討する必要がある。理論面では、旋法が不確定なアンティフォナDomine qui operati sunt(GS 1, p. 256b)の旋律の書き換えに関する部分で、その開始音をG音として第8旋法に分類する史料群と、5度上のc 音から開始する史料群に分けられることが明らかになった。これまでに確認した中世典礼音楽写本では、後者の例が確認されたが、どちらもイタリア写本にはみられないヴァリアントであり、現存する典礼音楽写本を元に理論面での裏付けを進めるとともに、この部分をどのように校訂するか検討中である。 8写本の中で『音楽についての対話』の序文として書写されているテキスト『あなた方が熱心に頼みので (Petistis bnixe)』 (GS 1, p. 251-252)を見直したところ、Michel Hugloのクリティカル・エディションでは、校正上のミスとみられるテキストの欠落が見つかったため、何らかの形で改訂する必要があると思われる。 本研究で校訂した『音楽についての対話』のラテン語テキストは、本エディションに基づくChristian Meyerのフランス語対訳を付けてヨーロッパ(ベルギー)の出版社からの刊行を予定している。
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