2017 Fiscal Year Research-status Report
グローバルな視座から見る近代日本のピアノ製造の発展メカニズムと音楽文化
Project/Area Number |
17K02283
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Research Institution | Aichi University of the Arts |
Principal Investigator |
井上 さつき 愛知県立芸術大学, 音楽学部, 教授 (10184251)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ピアノ / 国産 / 万国博覧会 / 米国領事報告 / 洋楽器産業 / 海外進出 / オルガン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、洋楽導入後の明治期から昭和前期にかけての日本のピアノ製造に着目し、その発展メカニズムと音楽文化とのかかわりを読み解き、さらに、それを国際的な文脈に置き直す試みである。 昨年度は日本の国内での調査・研究は、おおむね予定通りに進み、①先行研究のまとめ、問題意識の確認、②戦前の日本のピアノの研究およびピアノの受容史研究、③国内外の博覧会におけるピアノの評価の検証、そして④米国領事報告を用いた研究を行った。 その結果、戦前の日本のピアノ製造に関する研究は、これまで世界のピアノ製造のなかに位置付けるという意識が乏しかったが、今回米国の領事報告に目を向け、それをほかの資料から裏付けることによって、日本の洋楽器製造業は非常に速い時期から海外進出に積極的であったこと、日本は国産ピアノを作ることができるようになってきわめて短時間で海外進出を果たしたことが分かった。一方、当時の日本における洋楽受容はコンサートの曲目などからも推察できるように初歩的な段階だった。つまり、洋楽に関してはモノづくりが先行していた。日本の楽器製造は、戦後ゼロから再出発し、急成長を遂げて輸出産業となるが、その土台を作ったのは明治末期から戦前にかけての楽器製造の取り組みだったことが明らかになった。 さらに、博覧会との関係を読み解くことにより、国内外の博覧会への積極的な参加が、日本の楽器産業が発達する上で重要な契機になったことも実証された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国内での調査研究は順調に進んだが、公務が忙しく、海外に直接赴いて調査研究をする時間が取れなかったため。ただし、ベルリンでの調査に関しては現地在住の研究者に依頼するなど、それを埋め合わせる努力はしている。
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Strategy for Future Research Activity |
国内での調査研究を先に行うように予定を組み替える。海外での調査計画については見直し、一部を3年目に先送りする。
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Causes of Carryover |
公務多忙のため、海外での調査研究ができなかったため。海外での調査研究の予定をもう一度見直し、次年度分の調査期間を延長することを考えている。
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