2020 Fiscal Year Research-status Report
グローバルな視座から見る近代日本のピアノ製造の発展メカニズムと音楽文化
Project/Area Number |
17K02283
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Research Institution | Aichi University of the Arts |
Principal Investigator |
井上 さつき 愛知県立芸術大学, 音楽学部, 教授 (10184251)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ピアノ / 技術革新 / グローバル / 音楽文化 / 楽器産業 / 万国博覧会 / ヤマハ / カワイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、洋楽器導入後の明治期から昭和前期にかけてのピアノ製造に着目し、その発展メカニズムと音楽文化のかかわりを読み解き、さらに、それを国際的な文脈に置き直す試みである。本研究の特色は、ピアノ製造を近代日本の音楽文化の展開の中に位置づけると同時に、19世紀後半の主要なピアノ製造国であった英仏独米など諸外国との関係性に留意し、国際的な楽器製造の文脈に位置づけ、統一的な視点で論じる点にある。 2020年度は、研究期間を延長したが、コロナ禍が終息しないため、当初予定していた国外での調査は不可能になった。国内の調査についても、図書館の利用が大幅に制限されるなど、困難なことが多かった。 その中で、日本楽器製造(現ヤマハ)の重役だった箕輪焉三郎が残した資料(沼津市明治史料館所蔵の旧幕臣箕輪家資料)を撮影し、翻刻する作業を進めた。また、その箕輪焉三郎関係の資料を使って、1920年代のヤマハについての研究をまとめ、日本音楽学会の全国大会で発表した。また、それを論文にまとめ、愛知県立芸術大学の紀要に発表した。さらに、戦前の国産愛用運動と国産ピアノ製造の急激な伸展とのかかわりについて研究し、愛知県立芸術大学の音楽学コースの紀要に発表した。 一方、万国博覧会とピアノの関係について書いた拙稿「万国博覧会と『ピアノ』の誕生」が論文集『万博学―万国博覧会という、世界を把握する方法』(思文閣出版)の一篇として出版された。12月にはそれに基づく国際シンポジウムが京都大学で開催され、そこで論文の概要を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
進捗状況としては予定よりもやや遅れている。コロナ禍が終息しないため、予定していた国外調査が不可能になってしまったこと、また、国内での調査も制限が多いことが主な理由である。 たとえば、国内の図書館で調査をするにしても、国会図書館は抽選に当たらなければ入館できず、東京藝術大学や名古屋芸術大学の図書館のように、学外者は使用ができなくなった図書館も多く、三井文庫については閲覧者を午前、午後、各一人に絞るなどの制限が実施されたため、国内の調査も困難をきわめた。緊急事態宣言により東京都立中央図書館は閉館しているため、いまだに調査ができていない。これは非常に残念である。 今年度で研究をまとめるために、当初予定していた国外調査はあきらめざるを得ないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は研究の総まとめを行い、報告書を作成し、研究成果を広く発表する。学会での口頭発表を行い、共著の書籍の中で、研究論文を発表する。 当初予定していたレクチャーコンサートについても、愛知県立芸術大学の室内楽ホールを使用して実施する予定である。 一般向けの講座については、2020年7月に愛知県図書館で行うことが決定し、もう一件、講座を実施することも決まっている。 これらの実践を通じて、多くの人々に研究成果を知っていただきたいと願っている。
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Causes of Carryover |
主に、コロナ禍のため、予定していた国外調査がまったく実施できなかったことによる。 次年度は箕輪家資料の翻刻を進め、内容をまとめて発表することを研究の柱とする。その翻刻のための謝金や出版費用、郵送料などが発生する。また、講演会やレクチャーコンサートの開催のための費用も必要となる。このようにして、研究の総まとめを行う。
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Research Products
(5 results)