2021 Fiscal Year Annual Research Report
Study on the Direction of Emerging Theatre in modern Japan: focusing on the musical direction of shin-pa theatre
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17K02287
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Research Institution | Kyoritsu Women's University |
Principal Investigator |
土田 牧子 共立女子大学, 文芸学部, 准教授 (30466958)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 劇音楽 / 新派 / 音楽演出 / 蔭囃子 / 家庭小説 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、①明治期の新派における家庭小説の劇化作品と、②戦後の昭和期から現在に至る新派作品に着目して、その音楽演出を分析した。 ①に関しては、徳富蘆花の『不如帰』を対象にしてその音楽演出の成り立ちを追った。『不如帰』の劇化については、すでに指摘があるように、柳川春葉の『脚本不如帰』(今古堂書店1909)がその後の定型となるが、春葉脚本の刊行以前には様々な試行錯誤があった。本作の眼目となっている「逗子不動堂の場」についても、ストーリー展開自体に上演による差異があった。音楽演出についても同じことが言え、明治41年4月本郷座における春葉脚本の初演以前には定まったものがなかったことが明らかになった。その一方で、明治38年9月朝日座の畠山古瓶脚本の「逗子海岸哀別の場」には、柳川春葉脚本、あるいは現行の「逗子不動堂の場」との共通点が見られた。そこには両上演で浪子を演じ、音楽演出にも強い関心を注いだ喜多村緑郎の存在があることが推測された。喜多村が浪子を得意とし、その後も上演を重ねたことで、その演出が型として定着していったと言えよう。 ②に関しては、①と同じく家庭小説の劇化作品の代表である『婦系図』について、戦後の音楽演出の変遷を追った。『婦系図』については「湯島境内の場」で使われる清元節《三千歳》や「めの惣内の場」の長唄《勧進帳》が良く知られるが、序幕の「飯田町早瀬宅の場」や「本郷薬師縁日の場」、「柳橋柏家の場」など他の場面でも、小唄、義太夫節などの三味線音楽や、囃子の音、櫓の音など様々な効果音が他所事的に使われる実態を提示し、そこにも時代に合わせた音楽ジャンルや選曲の変遷が見られることを明らかにした。そのほか、川口松太郎の『鶴八鶴次郎』『明治一代女』、北條秀司『明日の幸福』についても付帳の翻刻を行い、考察を加えた。
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Research Products
(1 results)