2018 Fiscal Year Research-status Report
音響解析を用いたインドネシア・バリ島のガムランの変遷
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17K02292
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
塩川 博義 日本大学, 生産工学部, 教授 (50187324)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅田 英春 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 教授 (40316203)
皆川 厚一 神田外語大学, 外国語学部, 教授 (60337748)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ジャワ島のガムラン / ゴング / バリ島のガムラン / 音響シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、ゴングの調査を行うために、バリ島の楽器工場だけでなく、ジャワ島の楽器工場をいくつか訪れた。現在、バリ島ではゴングの製作は行われてないので、ジャワ島のソロにあるガムラン工場で、バリ島で使用するゴングの製作する過程を見学できた。また、ジョグジャカルタにおいても、2か所で鉄のゴングの製作現場を見学してきた。そして、ジョグジャカルタに滞在していたときに、ボロブドゥールの浮彫壁画を見学して、ゴングのレリーフがないことを確認してきた。この結果を受けて、カンボジアのクメール古代遺跡に描かれているゴングのレリーフについて日本大学生産工学部研究報告Aの研究ノートにまとめて掲載決定(2019年6月発行)になった。 バリ島のガムランは、ジャワ島のガムランから発展してきたので、今年度はジャワ島のガムランの録音解析を精力的に行った。その結果、スレンドロ音階のものは国内で5セット、ジャワ島で2セット、計7セット、ペロッグ音階のものは、国内で4セット、ジャワ島で1セット、計5セットの録音および解析ができた。 バリ島のガムランでは、新たにデンパサール特別地区のカユマス村落が所有するガムラン・ゴング・クビャールの測定を行った。このガムランはもともとカランガスムの王宮が所有していたガムランであり、やはり、音高が全体的に低いことが明らかになった。 そして、29年度に求めた数値シミュレーション手法を用いて、ガムラン音板を長さ、幅、そして、反りを変化させたときに、音の高さがどのくらい変化するかという形状の違いによる音の変化を明らかにした。さらに、それらのシミュレーション解析結果に基づいて、実際にガムランの楽器をいくつか試作し、シミュレーション解析で得られた結果を検証した。これらの成果は日本設計工学会のジャーナル「設計工学」に「ガムラン音板の固有振動特性に及ぼす形状の影響」というタイトルで掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ガムランの音板おにおいて、長さ、幅、そして、反りを変化させたときに、音の高さがどのくらい変化するかという形状の違いによる音の変化を明らかにし、それらのシミュレーション解析結果に基づいて、実際にガムランの楽器をいくつか試作し、シミュレーション解析で得られた結果を日本設計工学会のジャーナル「設計工学」に「ガムラン音板の固有振動特性に及ぼす形状の影響」というタイトルでまとめることができた。これにより、ガムラン音板の製作を、かなり体系化できた。 また、いままでのカンボジアで行った調査であるクメール古代遺跡に描かれているゴングのレリーフについて日本大学生産工学部研究報告Aの研究ノートにまとめることができた。 さらに、昨年度まで行うことができなかったジャワ島のガムランの測定においても、スレンドロ音階のものは国内で5セット、ジャワ島で2セット、計7セット、ペロッグ音階のものは、国内で4セット、ジャワ島で1セット、計5セットの録音および解析ができた。これらの結果から、今後、バリ島のガムランの音高と比較考察する予定である。 また、バリ島内では、新たなガムラン・スマルプグリンガンやガムラン・ゴング・グデの測定はできなかったが、もともとカランガスムの王宮が所有していたガムランであるデンパサール特別地区のカユマス村落が所有するガムラン・ゴング・クビャールの測定を行うことができた。 そして、ジャワ島にあるガムラン工場を訪れて、ゴングの制作過程を見学できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もジャワ島のガムランの測定を行い、ジャワ島のガムランの音高についてもまとめたい。特に、バリ島のガムラン・ゴング・クビャールはペロッグ音階なので、ジャワ島のペロッグ音階のガムランと比較検討して、バリ島のガムランの変遷について考察していきたい。 また、いろいろな大きさのゴング測定して、それらの音響シミュレーションを行い、形状の変化による音高の違いや、うなりの発音性状などを分析していきたい。そして、インドネシアのバリ島やジャワ島だけでなく、カンボジア、ベトナム、ミャンマーなどのゴングを測定して音響分析を行っていきたい。さらに、材料の違いによるその製造方法の違いも検討したいので、今年もジャワ島だけでなく、ミャンマーやカンボジアなど楽器工場へ見学を行く予定である。これらによって、いずれはゴングの製作方法を体系化したい。 バリ島のガムランに関しては、レコードやCDなど既存の音楽録音から、楽器の音高を測定できないかいろいろと検討していきたい。測定許可がなかなか下りないところのガムランを分析できるからである。これらが可能になれば、今年度、できればガムラン・スマルプグリンガンやガムラン・ゴング・グデのデータを増やして、それらを論文にまとめていきたい。 時間があれば、インドネシアやインドシナ半島にある古代遺跡に訪れて、その壁面に描かれているレリーフを調査して、最終的にコブ付ゴングの発祥地がジャワ島であることを確認したい。
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Causes of Carryover |
予定していたバリ島への渡航が一回できなかったため。次年度の渡航費に充当する。
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Research Products
(3 results)