2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02295
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
伊藤 克亘 法政大学, 情報科学部, 教授 (30356472)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山中 玲子 法政大学, 能楽研究所, 教授 (60240058)
赤石 美奈 法政大学, 情報科学部, 教授 (60273166)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 能 / 能楽師 / 謡 / メロディ / 表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
新たに研究協力者として、金剛流能楽師に加わってもらった。このことにより、これまで明確でなかった点がいくつも明らかになり、情報処理学会の理不尽な査読により遅れていた研究計画の遅れをかなり回復することができた。 特に重要な点として、音高変化のモデルの修正があげられる。本研究の中核であるツヨ吟の連続的な音高変化に対し、従来は、謡の音響信号を観察した結果から、3から5次程度の多項式をあてはめていた。しかし、実演者の感覚では、単調増加する2から3次程度の多項式であるとの指摘を受けた。その指摘を反映して、制約付きで多項式にあてはめることで、より妥当なメロディを推定できるようになった。また、一連のフレーズでは、フレーズの開始点や息継ぎ後などでは、楽譜上で同じ音高のところは、同程度の音高になるとの知見を得た。この点については、音響信号の調査が不十分であり、アルゴリズム化にはいたっていない。また、ツヨ吟、ヨワ吟を通じて、下音、中音、上音、上ウキなど、相対音高が比較的安定した核音とそれ以外の音高が不安定な音に分類するテトラコルド理論を援用することで、より妥当なあてはめが実現する可能性を見出し、2020年からの新たな科研費の申請につながり、無事採択された。これらの成果を、1月の音声研究会での招待講演で披露した。 これまでは、素謡の独吟の部分を対象に観察、分析してきた。しかし、その方法では、地謡の部分のデータを増やすことができない。そのため、番囃子や地謡の部分でも分析できるようにするために、混合音からの基本周波数推定に取り組んだ。ニューラルネットを用いた手法で、独吟に囃子が重なる場合については、0.9 以上の精度で基本周波数が推定できる方法を開発し、情報処理学会全国大会の学生奨励賞を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
情報処理学会の理不尽な査読により昨年度は壊滅的な遅れを喫してしまった。しかし、能楽師に研究協力者として参加してもらったことで、遅れはほぼ回復できた。漠然としていた不明な点が明らかになったため、計画が進むようになった一方で、当初想定していた研究項目をいくつか見直したため、当初の研究以上とはいえないが、十分に順調な進展であるといえる状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
ツヨ吟のメロディ推定アルゴリズムについて、確定していない部分があるため、その点をまとめるために、研究計画を延長して取り組むよう計画を変更した。 一方、テトラコルド理論に基づく音楽的モデルについては、かなり大きな計画となるため、新たな計画として2020年度開始の科学研究費として申請し、採択されたため、そちらで展開する。また、謡の部分だけ抽出する技術も順調に進んできたため、この点についても、新たな科学研究費で展開させる。
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Causes of Carryover |
能楽師が新たに研究協力者として加わったことにより、研究計画を変更し、延長することになった。また、研究協力者が京都在住のため、予算の内訳も大きく変更される。これらを踏まえて延長分だけ次年度使用に回した。 使用計画は、打ち合わせのための会議費、出張旅費におおむね充てる予定である。
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