2018 Fiscal Year Research-status Report
演劇研究における録音資料分析:バーナード・ショー作品を用いて
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17K02299
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
八木 斉子 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (10339666)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 芸術諸学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はバーナード・ショーによる演劇作品の録音資料分析を中心とするものである。交付申請書で明示したとおり、文献を入手し読み解くことによって研究の素地を固めた初年度に続く本年度(2018年度)においては実際に録音資料を試聴・分析する作業を開始した。 「書かれた文字(ショーが著した台本)」とその変換である「音声空間」とを照らし合わせて分析し「文字」と同等の研究意義を「音声空間」に見出すことが本研究の目的である。そこで、まず、初年度に文献から得た知見の一部を検討し直し、本研究代表者が過去に別の作家による演劇作品の録音資料を分析した際に用いた手法をあらためて確認した。その結果、今回の録音資料分析においても同じ手法が有効である、つまり、修正すべき点は特に無いと判断し、そのうえで作業を進めることとした。 年度の中期を使って大英図書館が所蔵する録音資料を試聴・分析した。本研究ではショーによる演劇作品群のうち6つを具体的な研究対象と定めており、原則として、発表年の古い作品から順に検討する方針である。したがって、今回の対象作品は『ウォレン夫人の職業』および『キャンディダ』であった。前者は録音資料の数において豊富であるため、試聴・分析時間の大半はそちらに当てられた。音を3種類(言語音・音楽・効果音)に区別したうえで各々の特徴に応じて分析した。 その結果にもとづき、『ウォレン夫人の職業』1947年録音を中心に検討する論文を英文で執筆し、これは年度の終わりに査読付き学会紀要に掲載された。論文では、1947年録音が登場人物達の舞台における位置および互いの距離とその変化を言語音と効果音の工夫で表現していること、つまり、「書かれた文字」によって直接また間接に指示された事柄を当時の技術で可能なかぎり忠実に「音声空間」へ転換していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画として掲げていたとおり、資料分析手法の妥当性の確認、実際の資料分析、論文執筆を全て遂行し、論文を査読付き学会紀要で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度および再来年度には、研究対象と定めている6作品のうち残り4つに関する録音資料を本年度と同じ手法で分析する。来年度は2作品を扱う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度の物品費内訳は全て図書であり、購入を希望していた図書のうち1冊の金額が使用残額を超えていたため、翌年度の物品費に加えたうえで購入することとする。
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Research Products
(1 results)